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温かさの社会心理学:温度を介して描かれる自己と他者

講師:大江朋子(帝京大学文学部准教授)

日時:2017年3月31日(金) 10:30〜12:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎451教室

【概要】
他者との相互作用は,多かれ少なかれ身体を用いた活動です。自分や他者の姿勢,視線,表情,声,匂い,心拍数や血流量など,その時々で身体で処理される情報の助けを受けて,人は自分や他者をとらえ,状況に応じた判断や行動を柔軟に実行しているといえます。
身体で処理される情報のなかでも,社会心理学においてとりわけ関心が寄せられてきたのは温度でした。自分や他者の「温かさ」「冷たさ」についての知覚は対人的な印象形成や行動を方向づける力をもつと考えられます。
大江先生は、こうした温度と対人的な相互作用との関連についての社会心理学的な研究の第一人者です。
今回の講演会では,温度が自己や他者の認知にどのように影響するかを調べた諸研究を紹介していただきながら,人が社会生活を営む上で身体感覚のもつ重要性を論じていただきます。広く社会心理学に関心をお持ちの皆さんの参加を歓迎いたします。

【講演会報告】
今回の講演は、温度(室温、体温)と他者評定との関連性に関する一連の実験の紹介であった。ある実験では、冷たい飲み物に比べ、温かい飲み物を手にした場合は、対象人物の人柄を高く評定することが見出された。しかし、ジャンケンや手合わせ遊びを5分間行って手の温度を高めた場合は、他者の人柄評定が低くなった。これは、その背後に原因帰属(温度を高めたものが外界か自己内部か)が介在していることが推測された。別の実験では、室温と実験者の人柄評定との関連性が見出され、実験中の身体温度の低下が自分よりも実験協力者(サクラ)の人柄を高く評定していることが見出された。また、さらに別の実験では、従属変数として潜在連合テストを用いて非意識レベルの他者評定についても検討された。発表後、質疑応答が行われ、「温かい」という表現(言葉)のない文化における当該現象の解釈、データの測定方法、社会心理学的研究方法の問題点などについて議論された。


予測誤差という社会の縮図:自己・他者・世界の成立と不成立

講師:浅井智久(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

日時:2017年3月29日(水) 11:00〜12:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎431教室

【概要】
社会という単位の中で自己あるいは他者は定義され,自他間のコミュニケーションを通じて言語が発達し,文化や思想が伝承される。このような世界の成り立ちを支える「自己表象」はどのように獲得されるのだろうか。いろいろ遡って行くと,意外かもしれないが,自己は運動に生まれるのかもしれない。近年の認知神経科学は,私達がスムーズな運動制御を実現している背後で,実は感覚入力ソースの自他判別が行われている可能性を指摘してきた。この自他判別は,脳内の順モデルによる「予測された感覚」と「実際の感覚フィードバック」の照合によって「予測誤差」が検出されることで実現され,主体感(sense of agency)の基盤となっている。この主体感の機能不全は,統合失調症の症状や高齢者の認知機能の問題とも密接な関連が指摘されるようになってきた。
講演者は主に心理行動実験を用いて,自己表象のメカニズムに対する基礎研究に加えて,統合失調症との関連についての応用研究を行ってきた。本発表では今までの研究を紹介し,自己という「主観的体験」が,予測誤差という単純な「物理量」の累積で説明されうることの意味を発展的に議論したい。特に,いろいろなレベルでの「予測」が,私たちの世界を彩り,多様な社会を形成していると考えたい。

【講演会報告】
人間は「自己」をどのように把握するのだろうか。他者から分離されたものとしての「自己」の成立を、身体感覚における予測誤差という視点から実験的に検討した講師の一連の研究について講義を得た。画面上で曲線をカーソルで追うという作業時に、作業者本人の動きに、他者の動きを重ね合わせることで予測誤差を生み出すと、カーソルから得られる主体感が減少する。そうした際の自己感の変化には、時間経過や、作業者本人の特性も関係することが示された。こうした「予測」と、そこからの「誤差」というものが、統合失調症などの精神病理や、さらには社会の成り立ちにも関わる可能性について活発な議論が行われた。


顔・表情認知における社会的・環境的文脈の影響

講師:中嶋智史(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

日時:2017年2月28日(火) 11:00〜12:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 142A教室

【概要】
顔・表情は、個体識別や、感情・意図の理解、印象形成など様々な情報の読み取りに用いられる社会的ツールであると考えられる。私は、これまで成人および、幼児、動物(げっ歯類)を対象にして顔・表情認知のメカニズムおよびその発達的、進化的基盤について検討してきた。
本講演では、まず、個体識別において重要と考えられる顔記憶に注目し、顔記憶において、表情、視線方向などの社会的文脈および、暗闇などの環境的文脈の影響を検討した研究について紹介し、顔記憶における社会・環境的文脈の果たす役割や機能的な意味について考察する。
次に、これまで視覚情報をほとんど利用していないと考えられてきたげっ歯類を用いて実施した表情識別能力の検討についての研究を紹介し、げっ歯類においても他個体からの社会的シグナルを認知可能であること、またその認知が、人と同様に社会的・環境的文脈によって変化する可能性があることについて述べる。

【講演会報告】
社会生活を送る上で、他者(他個体)の顔の認知は重要な意味を持つ。顔の認知には、顔そのものの記憶、表情の認知などさまざまな側面がある。さらに表情によって顔の記憶し易さが変化することや、そこに外的環境や、記憶主体の特性が影響することもある。
当日は、中嶋氏がこれまで行ってきた研究から、1)表情と視線方向が顔記憶におよぼす相互作用、2)顔記憶への環境明度と記憶主体の状態不安が与える影響、3)実験室ラットにおける同種他個体の表情認知機能、4)表情認知と温度の概念的関連性にかんする研究について、講演していただいた。大学院生、ポスドク研究員の方々にも参加いただき、活発な質疑応答が行われた。


コミュニケーション場面における社会的認知過程解明の試み

講師:菅さやか(愛知学院大学教養部専任講師)

日時:2017年3月4日(土) 10:30〜12:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎514教室

主催:三田哲学会

【概要】
社会的認知とは、人が自己や他者などの社会的事象を理解したり、それについて意味を見出したりする心の働きや仕組みのことを言います。社会的認知研究は社会心理学の中でももっとも多くの研究蓄積がある分野といえますが、多くの研究は、人が社会的事象をどのように記憶・判断するかといった個人内の認知過程の解明に主眼を置いており、コミュニケーションなどの他者との対人的相互作用との関連を考慮している研究は多いとは言えません。菅さやか先生はこうした研究に一貫して取り組まれてきた、数少ない研究者です。本講演では、菅先生が近年取り組まれている、説明行為が事象の実在性認知に与える影響の研究を中心に、コミュニケーション場面における社会的認知過程の研究動向についてご講演いただきます。

【講演会報告】
今回の発表の主眼は、ある事象に関する情報を他者に伝えることが、伝達者の当該事象に対する認知や感情に影響を与えるという点であった。宮本・菅・太幡(2015)の研究グループは、こうした現象を「説明効果」と命名した。実験では、実在しない品物について他者に商品目的や商品開発プロセスを説明することを通して、その実在性をどの程度認知するかを評定させた。その結果、特に、元々の実在性認知が低い品物(四角いサッカーボール)については、他者に対する説明を通して、その実在性を高く認知するようになったことが見出された。そして、言語、認知、文化の三者を含めた社会的認知研究の重要性に関する考察が展開された。その後、実験デザイン、方法、説明効果の解釈などについて質疑応答が活発に行われた。


パフォーマンス・アートの世界

講師:ゴンザーロ・ラバナル(Gonzalo Rabanal)

日時:2017年1月29日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス ノグチルーム

主催:ABR研究会

共催:三田哲学会

【概要】
「社会学特殊9」の授業でパフォーマンスアートの実践を行っており、学生による公演を予定しています。それに合わせて、海外よりアーティストを招き、実演とアーティストトークを依頼します。参加者にとって、世界のアートの第一線で活躍するアーティストの実演やトークは非常に興味深い機会となります。

【講演会報告】
30日より東京、大阪、長野で開催される日本パフォーマンスフェステイヴァルに参加するために来日した海外のパフォーマンスアーティストが自らの作品やコンセプト、来歴についてレクチャーした。3名の講師のほか、スペイン、アルゼンチン、フィリピンなどから来日のアーテイストも同じくレクチャーをしてもらったため、非常に贅沢な講演会となり、聴衆は大満足したと思われる。それぞれの作家の個人的、社会的背景の解説は、パフォーマンスアートの可能性を様々な次元に展開する土台にもなった。


これからのウィトゲンシュタイン--刷新と応用

日時:2016年12月17日(土)・18日(日)

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎1階シンポジウムスペース

主催:荒畑靖宏(慶應義塾大学)[協力:山田圭一(千葉大学)・古田徹也(新潟大学)]

共催:三田哲学会

【プログラム】
12/17(土)
13:00-13:30:基調講演「これからのウィトゲンシュタイン--刷新と応用」(山田圭一)
13:30-14:50:記念講演1(講演60分;質疑応答20分):「ムーアのパラドックス、思考動詞、主観性」(飯田隆[日本大学];司会・荒畑靖宏)
15:00-16:40:第1シンポジウム(発表60分[30分×2];コメント20分;討論20分)
「ウィトゲンシュタインと教育」(司会:古田徹也)
(A)「晩期ウィトゲンシュタイン哲学の教育学的含意--『確実性の問題』から」(平田仁胤[岡山大学])
(B)「近代教育批判とウィトゲンシュタイン--90年代以降の受容と展望」(渡邊福太郎[慶應義塾大学])
(C)「教育実践としてのウィトゲンシュタイン哲学」(丸山恭司[広島大学])
16:55-18:25:第2シンポジウム(発表60分[30分×2];討論30分)
「ウィトゲンシュタインと社会科学」(司会:山田圭一)
(A)「法学の問題とウィトゲンシュタインの可能性」(大屋雄裕[慶應義塾大学])
(B)「相互行為のなかで「見ること」」(西阪仰[千葉大学])
18:40-20:30:懇親会(来往舎ファカルティ・ラウンジ:定員50名)

12/18(日)
10:00-11:30:記念講演2(講演60分;質疑応答30分):「可能性の総体としての空間について」(野矢茂樹[東京大学]:司会・山田圭一)
13:00-14:20:第3シンポジウム(発表60分[30分×2];討論30分)
「『論理哲学論考』を読みなおす」(司会:荒畑靖宏)
(A)「「はしご」としての『論理哲学論考』の読み方と哲学の可能性」(吉田寛[静岡大学])
(B)「実在と階層--『論理哲学論考』における「関数」のリダンダンシーについて--」(野村恭史[北海道大学])
14:35-17:15:第4シンポジウム(発表90分(30分×3);休憩10分;討論60分)
「計算すること、従うこと」(司会:古田徹也)
(A)「中期ウィトゲンシュタインの数学の哲学--前期の「規則と計算」と後期の「規則 と計算」を繋ぐ」(岡田光弘[慶應義塾大学])
(B)「数学の外と内における時間--ウィトゲンシュタインの「像」概念の展開に向けて」(岡本賢吾[首都大学東京])
(C)「機械は《言語ゲーム》をプレイできるか」(田中久美子[東京大学])
17:15-17:20:閉会の挨拶(荒畑靖宏)


Artist Presentation by Sonia Hedstrand

講師:Sonia Hedstrand

日時:2016年11月29日(火) 14時〜15時30分

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス 研究室棟223教室

共催:ABR研究会主催・三田哲学会

【講師紹介】
She is a Swedish artist who works with video, photography, text and performance. Currently researching for a new project on emotional and performative labour in Tokyo Japan. Alumn from Whitney Independent Study Program, New York, 2012. Master in Fine Arts from the Royal Institute of Art, Stockholm 2011. Takes part in several artist run initiatives and collaborations such as Nollywood Hustlers, The Drinking Brothers and 0s+1s Collective. Freelancing writer in the essay format, as well as a teacher and lecturer in video, photo and text based art, feminist perspectives and political activism at several art schools and universities in Sweden and abroad.

ヘドストラントさんは、スウエーデンで活躍するアーティストで、今回、日本における感情労働、パフォーマンス労働をリサーチし、アート作品にすべく短期に東京で滞在しています。今回のテーマは、アートをつかって社会学をするアートベース社会学を、アーティストの側より接近するものと考えられ、非常に示唆的な議論が期待されます。日本のホストクラブへの参与観察を土台にした作品「Ukiyo Diary」は母国でも高い評価を受けています。

【講演会報告】
ヘドストラントさんによる講演は、スライドやビデオを使い、自身の作品のいくつかを紹介し、アートを様々な文脈で批判的に捉え返す思考を披露した上で、数年前に新宿歌舞伎町のホストをテーマにして制作された「Ukiyo Diary」および、今回の滞在目的である日本における感情労働、パフォーマンス労働のリサーチ(今回は隠し撮りなどではなく、インタビュー)について説明してくれました。参加者からは積極的な質問が提起され、それに対して熱心に回答する彼女の姿勢には感動すら覚え、非常に有意義な講演会となりました。一ヶ月の滞在の最終日にこれだけの話題を提供してもらったことには、参加者一同深く感謝した次第です。


Event Memory: A Theory of Episodic and Autobiographical Memory Based on Scene Construction not the Reliving of a Single Event.


講師:David C. Rubin (Professor, Duke University, Department of Psychology & Neuroscience)

日時:2016年11月6日(日) 14時〜

場所:慶應義塾大学 三田キャンパス 大学院校舎325B教室

共催:三田哲学会

【概要】
The idea of separating memory for events (episodic memory) from memory for knowledge (semantic memory) using introspection the as the data, dates back to antiquity. Memory for events was a category for memories from one’s own life, that were from events that occurred at a specific time and place, and that came with some kind of a warm personal feeling, such as reliving. Behavioral studies combined with advances at the neural level including recording from rodent hippocampi, structural neuroimaging of neuropsychological cases, and functional neuroimaging have added knowledge that can change the nature of the conceptual distinction between memory for events and memory for knowledge to one based on scene construction. Because we understand the visual system better than we understand judgments of reliving, this advances science and allows integration across levels of analysis and subject populations not possible with the older theories.

【参考文献】
Rubin, D. C. & Umanath, S. (2015). Event memory: A theory of memory for laboratory, autobiographical, and fictional events. Psychological Review, 122, 1-23.

* 入場無料 申し込み不要 講演は英語でおこないます(通訳無)

 Rubin教授は、自伝的記憶研究の第一人者であり、今回の講演では、心理実験や神経心理学的データに基づき、新しい記憶研究の枠組みについてのお話がうかがえるものと思います。奮ってご参加ください。
【講演会報告】
講演の内容は、記憶研究者の間で当たり前のように考えられている出来事の記憶であるエピソード記憶と知識の記憶である意味記憶の区別に対して異を唱える、刺激的かつ挑戦的なものであった。難解な内容で聞き取りやすい英語ではなかったが、同席した北海道大学の仲真紀子教授の部分的な解説によって、参加者の理解は助けられたものと思われる。質問も、講演者が講演時間後も教室に残り、個別的な質問を受けてくれたため、学生も質問ができたようであった。

関西倫理学会2016年度大会(三田哲学会共催)

日程:2016年11月5日(土)・6日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス第一校舎

プログラム
〈11月5日〉
【研究発表会】
■第一会場(102教室、13:00〜15:15)
「ケアの倫理と愛の現実--重なりと異なりの分析から」小西真理子(国際基督教大学)
「環境プラグマティズムの方法論とロールズ=ハーバーマス論争」大石敏広(北里大学)
「『実存』する間柄--和辻哲郎における『実存哲学』の受容と衝突」服部圭祐(京都大学)
■第二会場(104教室、13:45〜15:15)
「ルソー『社会契約論』の再構成」下地真樹(阪南大学)
「フィヒテ初期道徳論における義務意識について」佐々木達彦(同志社大学)

【依頼講演】(101教室、15:30〜16:15)
「現代医療における生権力と生命倫理」松島哲久(大阪薬科大学)

〈11月6日〉
【研究発表会】
■第一会場(102教室、11:00〜12:30)
「道徳的責任についての信念と事実」井保和也(京都大学)
「人格の同一性とその整合性」石毛弓(大手前大学)
■第二会場(104教室、11:00〜12:30)
「生きる意味としての学問--中期ニーチェにおける『認識』概念の変容をめぐって」井西弘樹(大阪大学)
「道徳の『価値』を問題にするということ--ニーチェ『曙光』における『あらゆる価値の価値転換の試み』」谷山弘太(大阪大学)

【シンポジウム】(101教室、13:30〜16:30)
テーマ『自由と平等』
「戦後レジームにおける自由と平等」白井聡(京都精華大学)
「自由と平等の和解--ロールズの正義の二原理の意義と限界」林芳紀(立命館大学)
「中世の二人の思想家とリパブリカニズム」山口雅広(龍谷大学)


MIPS 2016 三田哲学会 哲学・倫理学部門 例会

日時:2016年10月22日(土) 12時45分〜18時10分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎515番教室

プログラム
【研究報告】
12:45〜13:30 前期ハイデガーにおける本来性の概念の存在論的解釈 山下智弘 君(文学研究科博士課程)
13:30〜14:15 トマス・アクィナスにおける存在と本質の区別と超越概念 内山真莉子 君(文学研究科博士課程)
14:25〜15:10 人生全体についてコミットするとはどのようなことか 長門裕介 君(文学部非常勤講師)
15:10〜15:55 思想なき美という思想 -民芸品の美が教えてくれるもの- 林晃紀 君(国際センター非常勤講師)

【講演】
16:10〜17:10 アリストテレスにおける動物の知性と表象 --『動物誌』から魂論へ 金子善彦 君(文学部准教授)
司会:荒畑靖宏 君(文学部准教授)
17:10〜18:10 「包むもの」をめぐって -西田・田辺・高橋- 田中久文 君(日本女子大学教授)
司会:柘植尚則 君(文学部教授)


私たちの表現とダンス ~Embodiment の視点から~

講師:橋本有子(ダンサー、お茶の水女子大学・武蔵野大学・杏林大学非常勤講師他)

日時:2016年10月13日(木) 12時〜14時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎457番教室

共催:ABR研究会・三田哲学会

【概要】
橋本氏は、学芸大学で教育学、お茶の水女子大学大学院で舞踊、ニューヨーク州立大学大学院でダンスを修め、長くアメリカで活躍したダンサーです。今回は、橋本氏が研究実践するラバンムーブメントアナリシスを軸にしながら、参加者とともにワークショップ形式で作品作りにも挑戦する予定です。
講師プロフィール:自身の動きを思考することを通し、長年悩まされていた腰痛を克服。現在、大学非常勤講師を務める(体育・ダンス)傍ら、乳幼児のダンスレッスンをはじめ、身体運動を専門として番組づくりや社会教育プログラムに関わる。お茶の水女子大学大学院、ニューヨーク州立大学大学院にて身体/ダンス教育法、Laban/Bartenieff Institute of Movement Studies(ブルックリン市)でラバン運動分析法を学ぶ。

【講演会報告】
ラバンの運動分析が簡単に説明された後で、参加者の自己紹介が行われる。この時、自己紹介に自分で動きをつける、この動きから、徐々に作品を作り上げるというワークショップが2時間をかけて行われた。参加者はダンスという、非日常的な次元からではなく、身体の動きという当たり前に日々常に行っている素材から自分たち自身で舞踊が構成されるという経験を得ることができ、身体への気づきを新たにした。


Kantian Autonomy without Self-Legislation of the Moral Law

講師:Marcus Willaschek(Johann Wolfgang Goethe Universität, Frankfurt am Main)

日時:2016年10月12日(水) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南館4階会議室

共催:三田哲学会

【概要】
「自律(autonomy)」はカント倫理学にとって中心的な概念であり、標準的な解釈によれば、自律とは道徳法則の自己立法のこととされるが、そのような理解に対して現在さまざまな批判が投げかけられている。それに対し、ヴィラシェク教授が提示するのは、道徳法則それ自体を自己立法的なものとみなさず、むしろ「自律を命じる」法則とする代替案である。本講演では、この新たな解釈とその有効性についての彼の考えが提示される予定である。
なお、今回の講演はP・クラインゲルトとの共著原稿にもとづいてなされる予定である。

【講師紹介】
Prof. Dr. Marcus Willaschek
1962年生。ミュンスターで哲学、生物学、法学、心理学を学び、1991年にペーター・ロースの下、"Praktische Vernunft Handlungstheorie und Moralbegründung bei Kant"で学位(Ph. D)を、1999年に教授資格を、それぞれ取得した。2003年より、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学(ドイツ、フランクフルト)哲学教授。

【講演会報告】
Professor Willaschek presented a new interpretation of one of the core elements in Kant’s ethics, namely the idea of autonomy or self-legislation. In Kant the principle of autonomy commands to act only on those maxims which we ourselves could legislate as moral laws. This is to say we need to act, as if we were the head of the ethical community who enacts laws. According to this new interpretation, the principle of autonomy itself is not self-legislated, but only provides a test mechanism for maxims, i.e. fundamental principles of action. This new reading triggered an intensive discussion and invited the audience to reconsider their stance on the fundamentals of Kantian ethics.


インド・オディシャ州における舞踊家・小野雅子の文化創造

講師:小野雅子(舞踊家・Mudra Foundation代表), 松尾邦彦(演出家・メディアアーティスト), 小林三旅(映像作家)

コメンテーター:稲田奈緒美(舞踊評論家・慶應大学理工学部非常勤講師)

日時:2016年9月30日(金) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス ノグチルーム (定員40名:先着順)

お問合せ先:imoto.yuki@gmail.com (井本由紀)

共催:三田哲学会

【概要】
本シンポジウムでは、古典インド舞踊家小野雅子氏の芸術と社会活動を「オディシャ・ビエンナーレ」と「ドクラプロジェクト」の事例を中心に報告する。
オディシャ・ビエンナーレは、古典舞踊やコンテンポラリーダンスなどのパフォーミングアーツを軸に、映像、ファインアート、デザイン、ファッション等、様々な分野のアーティストがオディシャに世界各地から集い、創造的な表現の場を継続的に育むことを目指している。小野氏はオディシャ・ビエンナーレが目指す文化創造のあり方を次のように説明している:
「インドや日本のアジアの美は、大衆文化や日常性を併せ持つものから離れることができないリアリティと芯の強さをその美の中に含んでいます。オディシャビエンナーレでは、インド文化が持つ様々な美意識を軸に、インドと日本、またはインドと各国の美の基準が混ざり合い、既存の美術の枠を越え世界的な視点を持った、アジア的な新しい芸術観が創造されることを目指しています。」
本シンポジウムの第一部では、舞踊評論家稲田奈緒美氏と演出家松尾邦彦氏を迎え、オディシャビエンナーレが目指す「アジア的な芸術観」の意味と意義を掘り下げていく。

シンポジウムの第2部では、映像作家小林三旅氏と小野雅子氏が中心となり「ドクラプロジェクト」について報告する。ムドラーファウンデーションはラタン・タタ・トラストの支援のもと、オディシャ州の伝統工芸ドクラDhokraに焦点をあてたプロジェクトを2009年に始めている。ドクラは4000年前から続くとされる製法(ロストワックス製法)による真鍮細工であり、オディシャ州南部の60以上もの部族民の一部の集落によって作られている。ドクラを作る集落の人々は従来、生活用品や神像などを作り周辺の部族民と物々交換をしていたが、現在はドクラの置きものやネックレスを土産品として作り、現金に換え生活している。収入は月収2000~3000ルピー(家族単位)と推定されている。ムドラーファウンデーションは、ドクラを作る三つの集落において人々の生活様式、美意識、経済観念を調査し、記録し、本として出版した(2016年10月出版予定)。小野氏は、「今後は日本のアーティストやデザイナーに協力を仰ぎ、世界中で販売できるような付加価値の付いた商品企画を作る」ことを目指しているという。本シンポジウムでは、アートと文化人類学の観点から、ドクラプロジェクトの今後の展開と可能性について探る。

【小野雅子氏 略歴】
東京都出身インドオディシャ州在住。モダンダンス、ヒップホップ等を経て、1996年からオディッシーダンスを学ぶために渡印。世界レベルのインド舞踊家を育成輩出するインド舞踊名門校ヌリッティアグラムに入門。 1998年からヌリッティアグラムのダンサーとして、数多くの公演活動をするとともに、日本でレクチャー・デモンストレーションやワークショップを開く。2001年からソロ公演を始め、世界各国にて公演。2007年から日本人としては唯一のインド政府公認オディッシーダンサーとなり、同年、NHK BS1「ファーストジャパニーズ」に出演。2008年NEWSWEEK誌「世界が最も尊敬する日本人100人」の一人として選ばれる。現在は、ソロ公演を中心に活動するとともに、コンテンポラリーダンサーやフュージョンミュージシャンとのコラボレーションによるタントリックダンスのパフォーマンスも展開している。2009年にムドラーファウンデーションを創設。2012年にオディシャビエンナーレを始動。

【講演会報告】
9月30日のシンポジウムは、舞踊家・小野雅子氏のオディッシーのパフォーマンス(純粋舞踊・サヴェリパッサヴィー)から始まった。その後、小林三旅氏を中心に、ムドラー・ファウンデーションの活動である「ドクラ・プロジェクト」の報告があり、ドクラの製法過程の映像が紹介された。何千年も続くとされる製法の技術を「改善・改良」する、あるいは「伝統」「芸術」としての価値を見出す、という意識が集落の人々にはないことに小林氏は焦点を当てている。現時点ではドクラプロジェクトは製法の記録活動のみを行っているが、今後、(日本人芸術家を中心とする)ムドラー・ファウンデーションは現地とどのような姿勢で協力をし「文化創造」を行うべきなのか、という問いに取り組むことの重要性とその難しさが明らかになった。次に、松尾邦彦氏を中心に、ムドラー・ファウンデーションのもう一つの柱である「オディシャ・ビエンナーレ」の紹介があった。オディシャ州ではコンテンポラリー・アートはこれまでほとんど上演・展示されることがなく、そのような「文化」「芸術」に対する一般的な認識が希薄であることが指摘された。オディシャ・ビエンナーレを世界的に知られる芸術祭へと育てる目標とともに、オディシャ州現地に根ざした文化創造の重要性が議論された。インド現地で20年以上暮らし、オディシャの自宅兼スタジオ・スクールから芸術教育活動を発信している小野雅子氏を中心に、従来の西洋中心モデルから脱却した新しい芸術祭づくりのあり方を模索する必要性が語られた。


より有益で、より効率的な研究をデザインしよう

日時:2016年9月22日(木・秋分の日)

[午前の部]9:30〜12:00(9時開室)

[午後の部]13:30〜17:30(18時閉室)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス東館G-SEC LAB(東館6F)

共催:科研費・挑戦的萌芽研究「社会心理学の再現可能性検証のための日本拠点構築」, 慶應義塾大学 三田哲学会

【概要】
近年、心理学における実験結果の再現性が疑われる事態が生じています(Open Science Collaboration, 2015, Science)。この心理学の危機に対して、従来の心理学研究における慣習の問題点と、その解決法が指摘されてきました(参考:池田・平石, 2016)。
今回、科研費・挑戦的萌芽研究「社会心理学の再現可能性検証のための日本拠点構築(代表:三浦麻子・関西学院大学教授)」と慶應義塾大学・三田哲学会の共催により、こうした動きの最前線で活躍されているDaniel Lakens博士(Eindhoven University of Technology)を招いて、講演会とワークショップを企画しました。これまでのやり方をただ批判するのでは、そこから、よりinformativeかでよりefficientな研究デザイン方法を、実践的に講義し、さらには発展的な内容について議論します。奮ってご参加下さい。

※講演・ディスカッションは英語で行われます。ディスカッションにおいては、企画チームや、利他的な参加者によるサポートがあることでしょう。

※おおよその参加予定者数を把握したいので、事前登録をお願いしております。
https://goo.gl/forms/z5Qc2R5CgekNDhk53

【講演会報告】
講演では、心理統計における各種概念(p value, effect size, confidence interval, likelihood, Bayes factorなど)の再確認を導入として、統計検定におけるType I errorとType II errorをいかに適切に統制しつつ、他方でいかに効率的に研究を進めるか、sequential analysisなどの具体的な手法について解説が行われた。さらに既存の報告を評価する手法としてのp curve analysisの紹介などを経て、心理学研究がよりinformativeかつeffectiveなものとなるためには、研究計画の事前登録と事前審査、マテリアルの公開、データの公開といったopen scienceの促進が必須であることが論じられた。
 学期開始直前/直後の祭日に、朝から夕方まで一日がかりのワークショップであったことに加え、大雨という悪条件が重なったものの、逆に言えばそれだけの悪条件の中で集まった聴衆のモチベーションは高く、休憩時間に至るまで、講師を囲んで、または聴衆同士で活発な議論が行われる、充実したワークショップとなった。
 Dr. Lakensの厚意で、講演スライドは一般公開されており、共催である科研プロジェクトのWebサイトからダウンロードできる。また当日のライブ記録として、参加者によるTweetのまとめが作成されている。講演内容のみならず、講演では触れられていない、関連する日本語文献の紹介もなされている。

スライドのダウンロード
http://asarin.team1mile.com/replicability/jsps_kakenhi/activity_log/20160922lakensws

Tweetまとめ
http://togetter.com/li/1027774


アルゼンチン司法人類学チームの活動:「失踪」から「死」への書き換え

講師:石田智恵(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))

日時:2016年7月28日(木) 18:15〜20:15

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟313教室

司会:三尾裕子(慶應義塾大学文学部教授・文化人類学)

【講演要旨】
1976-83年の軍事政権下で行われた弾圧・粛清の被害者である3万人とも言われる「失踪者」の存在は、アルゼンチン社会がいまも直面し続ける大きな問題のひとつである。旧軍部が沈黙を守り続けるなか、拉致されたまま行方がわからない人物は、遺体が発見されないあいだ、生にも死にも分類できない「失踪」の状態が続く。残された親族や知人は徹底した不確定という困難な状況に置かれる。多くの人々が直面するこの耐え難い状況を解決する運動として、民主化の直後に結成された「アルゼンチン法人類学チーム」による一連の失踪者身元特定の取り組みがある。同チームの作業の結果、少しずつながら着実に「失踪者」のリストは短くなり続けている。そしてかれらの技術と経験は世界各地の紛争後地域で必要とされ、各地に継承されてきた。
本報告では、「日系失踪者家族会」メンバーへのインタビューを基に、「失踪者」というあいまいな存在であった家族の「死」が確認されることをめぐる反応、影響を考察する。近年になって遺体の身元が特定された例を含め、親族の語りが示す「失踪」の特殊性を、死をめぐる人類学の議論をふまえて論じたい。

【講演者プロフィール】
立命館大学大学院先端総合学術研究科修了、現日本学術振興会特別研究員PD(東京大学)。研究テーマは20世紀後半アルゼンチンにおける人種概念、移民の位置づけと権威主義政治の関係についての人類学的考察。日本人移民コミュニティを中心としてブエノスアイレスで調査を行なっている。最近の業績として、「軍政下アルゼンチンの移民コミュニティと「日系失踪者」の政治参加」『コンタクト・ゾーン』7号、京都大学大学院人間・環境学研究科、2015年。

【講演会報告】
アルゼンチンでは、1976-83年の軍事政権下で、「失踪」という名の下での政治的な弾圧・粛清が行われた。このような中で、「失踪」した人々の多くは、生死すらもわからない状態が続き、残された家族、親族、知人は、徹底的な不確定という困難な状況におかれたという。本報告では、「日系失踪者家族会」のメンバーを対象として、「アルゼンチン司法人類学チーム」による失踪者の身元特定の取り組みを通して、「失踪者」というあいまいな存在であった被害者の家族の、「死」が確認されることをめぐる反応、影響を考察した。失踪者の家族たちは、司法チームから「遺体」の発見を告げられることで、「死」が確定され、服喪が可能になる。しかし、「死」の確定作業は、失踪者を通常の死のように生者から切り離すのではなく、むしろ、失踪者を個人として社会の網の目の中に回復させ位置づけなおす作業としてとらえられるべきものであるという。すなわち、発表者は、失踪者は通常の死のカテゴリーとは異なる文化的カテゴリーの中に位置づけられるべきものであると、結論付けている。
質疑応答では、本事例での「文化的カテゴリーとしての失踪」あるいは「失踪者の文化」という場合の「失踪」が、災害や個人の意思による失踪などの場合とどう区別されうるのか、また「遺体」や「失踪」の調査地言語における含意、日系でも沖縄出身者が多いと推測される家族会の人々が持っている死生観などがいかなるものであったのか、など、多方面にわたる質問が提起された。周囲の人間にとっての理不尽な死(失踪)という事象は、アルゼンチンの個別事例を超えて敷衍して考えることができる問題であり、参加者にとっては刺激的な講演であった。


温故知新、青春から学ぶ -故きを温ねて、新しきを知る-

日時:2016年7月26日(火) 13:00〜18:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館大ホール

講演言語:日本語・英語

ゲスト:長田 孜(画商、長崎原爆被爆者、慶應義塾大学昭和25年卒),鈴木 敏夫 (スタジオ・ジブリ代表取締役社長・プロデューサー),David J. Freedman (慶應義塾大学環境情報学部教授)

発起人・モデレーター: 鈴木雅人(慶應義塾大学SFC研究所所員)

参加費:無料、事前申込必要(100 名程度)

連絡先:『フリードマン研究会“Free Discussion” @λ301』(Sankoo.takataka@gmail.com)

共催:三田哲学会

【概要】
「常識」を、どのように疑えばよいのだろうか。「グローバル社会」、「IT 化」、現代の潮流である言葉や概念を、我々はどう問い直せばよいのだろうか。当企画では、我々の常識 に今一度問いかける。
時代を超えて、今なお近代性を放ち続けるゲストの方々をお呼びし、その原点を探る。「温故知新」をもとに、彼らの「青春」から紐解いていきましょう。いまも昔も、ひとはどう考え、どのように社会を見るのでしょうか。
幅広い世代の参加を期待して大学内で開催します。どうぞふるってご参加ください。


バリの伝統芸能における<時・場・文脈>

講師:増野亜子(東京芸術大学・明治大学他非常勤講師)

日時:2016年7月21日(木) 18:30〜20:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟313教室

司会:三尾裕子(慶應義塾大学文学部教授・文化人類学)

【講演要旨】
インドネシア、バリ島の芸能と音楽は、第一義的にはバリ・ヒンドゥの儀礼の中で供物として奉納される儀礼的側面を強く持つものであるが、同時に神々と人々の両方に喜びを与える創造的な活動でもあり、共同体の中に深く根ざしている。 この発表ではバリのガムラン音楽と舞踊を、(1)音楽的な相互作用としての側面、(2)上演の<場><時><文脈>との関係、(3)伝統芸能の現代化と政策の関わりの3点を中心に考察する予定である。

【講演者プロフィール】
東京芸術大学大学院音楽研究科修士課程修了、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科比較文化学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(人文科学)。現在、東京芸術大学、明治大学他非常勤講師。 専門は民族音楽学。インドネシア、バリ島を中心とする東南アジア芸能の研究に携わる。バリの伝統音楽ガムランの演奏や指導も行っている。

【講演会報告】
今回は、バリのガムラン音楽と舞踊について、(1)音楽的な相互作用としての側面、(2)上演の<場><時><文脈>との関係、(3)伝統芸能の現代化と政策の関わりの3点が中心的に考察された。
(1)については、まずもって、ガムランという音楽が楽譜を使用せず、身体的に習得・記憶されるものであって、共演者たちの間で身体的・音響的・視覚的にコミュニケーションしながら音楽が進行するという特徴を持つことが紹介された。特に、ガムランではインターロッキングinterlockingという奏法が用いられるが、この奏法が他者の身体との融合によって可能になるものであることが強調された。
次に(2)では、ガムラン音楽は、<場><時><文脈>によってまとう衣装も、音楽のありようも変わってくることが紹介された。すなわち、どのような時と場で、どのような人がいて、何が求められているのか(文脈)を感知することで、パフォーマンスが生成されるのである。
(3)については、観光化やグローバル化の進行の中でのガムラン音楽の変容あるいは適応といった問題が考察された。具体的には、バリの伝統芸能を「神聖な」芸能と「世俗的」芸能に分類し、後者を観光芸能として切り離すことで、「神聖な」芸能を守る試みがなされている。また、グンデル・ワヤンという本来地味な打楽器による演奏について、後継者を確保するという目的で始められた子供を対象として競技会が、衣装が華美になったりパフォーマンスの動作が過剰になっていくことで、見られる芸能として変化してきている実態が紹介された。
質疑応答では、グンデル・ワヤンの競技会によって、グンデル・ワヤンの後継者が育ったとして、彼らが身に着けた身体性がグンデル・ワヤンを変質させてしまう可能性はないのか、グンデル・ワヤンの隆盛は、テレビやSNSなどとどのような関わり合いを持つのか、また、バリのガムランのあり方は、中部ジャワなどとはどう異なっているのか、など、たくさんの質問が提起され、活発な議論が展開された。


宗教、制度演化與人類的利他行為(宗教、制度の発展と人類の利他行為)

講師:Chiang Yen-Sheng(江彦生、香港中文大学社会系 Assistant Professor)

日時:2016年7月2日(土) 17:00〜19:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎473教室

講演言語:中国語、日本語通訳付き

共催:三田哲学会、慶應義塾大学人類学研究会、JFEアジア歴史研究助成「膨張する中国による東アジア新秩序下の中台関係に関する人類学的研究」研究会

【概要】
 人間の本質は利己的か、それとも利他的でありうるだろうか。この問題は長らく哲学や科学において、論議がなされてきた。利己ないし利他の程度は、人によって異なるだけではなく、個人が所属する社会の文化や制度の影響を強く受けてきた。本公演では、過去十年来の進化人類学と心理学(「演化人類學與心理學」、Evolutionary Anthropology and Psychology)を紹介しながら、宗教制度と利己的あるいは利他的行為の相関関係を論じる。まず利己的行為、利他的行為の定義およびそれにかかわる一連の問題について議論を行い、行動学派が用いる検証方法と研究の枠組みを紹介する。その後、過去十年来の学界(進化人類行動学派)が、宗教制度と自己の集団を利することを目的とする行為との関係について明らかにしてきたことを振り返る。最後に今後の検討課題について論じ、異なる領域の研究が相互に共同しあうことで、こうした問題を解明することを期待したい。

【講師略歴】
 PhD (University of Washington)。専門は社会行動科学(social behavioural science)。江教授はpro-sociality、すなわち社会や集団の利益を追求するために個人がいかに犠牲にするのかについて、特に、ソーシャルネットワークが人々がpro-socialな行動を形成する際に果たす役割についての研究を進めている。最近の業績として、2015 "Good Samaritans in networks: An experiment on how networks influence egalitarian sharing and the evolution of inequality". PLoS ONE, 10(6): e0128777。また講演として、「太陽の下の雨傘とひまわり ソーシャルメディアと香港、台湾の学生運動」 講演会「台湾、香港の若者の意識とソーシャルメディア」2015年11月4日 於北海道大学。

【講演会報告】 本講演では、人間の本質は利己的か、それとも利他的でありうるか、という問題について、進化人類学や心理学などのディシプリンからアプローチした研究が紹介された。
まず、講演者は、利他行為とは、自分の利益を損なう(あるいは自分には無益である)ことがあっても、他者の利益を図る行為と定義した。次に、利他行為に関する様々な学術的な研究が紹介された。特に、講演者の専門である行動学派におけるdictator gameの手法により、人類学者と共同で行われたパプア・ニューギニア、フィジー、ケニア、北シベリア、タンザニアでの調査事例が説明された。その後、利他行為の進化人類学的な研究として、宗教における利他行為が取り上げられた。分配実験という手法を用いた世界15の民族における行動実験においては、普遍宗教との接触度合いが高まるにつれ、価値があると認識されるモノであっても、他者に均等に分配しようとする傾向が強まるという結果が得られた。また宗教プライミング実験などの研究から、公開で行われる宗教的な集会に参加した人ほど社会化が促進されることや、宗教的な経験を共有することによって、他者への信頼が増し、所属するグループへのアイデンティティが強化されることなどが導かれた。
講演会には、人類学、進化心理学、医学など多方面の専門家、院生や慈善団体の関係者など、さまざまな参加者が集まり、活発な議論が展開された。


2016年度三田社会学会大会シンポジウム:〈家族主義〉を超えて - 戦後70年の家族と連帯

日時:2016年7月2日(土) 14:30〜17:45

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎445教室

共催:三田社会学会・三田哲学会

【概要】
本シンポジウムは、戦後日本における「家族主義」という問題の歴史的・理論的・学説史的な分析を通じて、現代における社会的連帯の可能性を検討しようという試みである。
これまで家族社会学の領域では、家制度や近代家族、福祉政策などさまざまな文脈で「家族主義への批判が展開されてきた。本シンポジウムでは、この家族主義に焦点をあてて、戦前から戦後へ、そして戦後70年のなかで何が変化したのか、あるいは、通底している問題は何かを検討してみたい。さらに、「後期近代」や「個人化社会」と称される現代、「家族主義」の問題はいかなる状況にあり、この問題を克服するうえで何が必要なのかを議論したい。本シンポジウムでは、4名の報告者が、家制度、農村、社会的養護、マイホーム主義といったそれぞれのテーマを通じてこの課題に取り組む。
コメンテーターは、家族政策の歴史的検討や沖縄での調査に基づく近代家族の再検討等をおこなってこられた静岡県立大学の犬塚協太氏と、近代家族や戦後家族の研究を牽引してこられた中央大学の山田昌弘氏のお二方にお願いしている。

【司会】
渡辺秀樹(帝京大学)

【報告者】
1.本多真隆(早稲田大学):「家」の越境と断絶 - 敗戦直後の家族論を中心に
2.芦田裕介(宮崎大学):戦後農村における地域社会の変容と家族主義 - 「空き家問題」を中心に
3.藤間公太(国立社会保障・人口問題研究所):社会的養護にみる歪んだ家族主義
4.阪井裕一郎(日本学術振興会):「マイホーム主義」を問いなおす - 家族を超える連帯のために

【討論者】
犬塚協太(静岡県立大学)
山田昌弘(中央大学)


ギフトエコノミーの可能性・ギフトによる社会関係構築

講師:熊倉敬聡(元慶應義塾大学、元京都造形大学教授)

日時:2016年6月15日(水) 14:00〜15:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 研究室棟223番

【概要】
熊倉氏は、フランス思想の研究の他、長らく、アートと社会の関係を思索や実践の対象としてきた。今回は、熊倉氏の最近のテーマの一つである、贈与行為に焦点を当て、脱資本主義的な生の技法への道筋を、「ギフトによる社会関係構築」としてお話しいただく。アート、哲学、現代思想、社会学を問わず、今この時代をいかに生きて行くのか、社会が全面的に合理化されるなかで、私たちの生を見直したいと考える。

【講演会報告】
実践的に行なわれているギフトサークルについての理論的な考察。「くらしごと」というオルタナティブ活動を「聖なる経済学」を執筆したエイゼンシュタインの紹介を通じ話された。またガタリのエコゾフィー議論を援用しながら、資本主義とギフトエコノミーの対比関係が説明された。最後にはギフトエコロジー、urban permacultureなども紹介され、エネルギー、気の循環や流通の重要性が、環境、主観性、社会関係という場面に即して議論された。その後は、参加者によってギフトエコノミーをめぐって活発な議論がなされた。継続するギフトの関係のありようはいかなるものなのか、近代資本主義への反照としての存在が見出された。


基礎心理学の新しい方法を拓く ビッグデータ・生体センサー・タブレットの活用

講師:櫻井保志(熊本大学)・安藤英由樹(大阪大学)・景山 望(海上自衛隊)

日時:2016年5月21日(土) 14:00〜17:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎2階522教室

共催:三田哲学会・日本基礎心理学会

【概要】
情報を取得あるいは提示する環境は、ここ数年大きく変わってきています。様々なデバイスの登場と進展は、基礎心理学においても刺激提示の仕方、データ収集のあり方、その分析の仕方に影響を与え始めています。このシンポジウムでは、「基礎心理学の新しい方法を拓く」という観点から、ビッグデータを使ったデータマイニング(とりわけその時系列処理の実際)、センサーを用いた無意識的な情報提示とそのフィードバックによる感情操作、タブレットを使ったフィールドでの基礎研究という、異なる方法論を活用しておられる工学者、心理学者から話題提供をいただき、基礎心理学における新たな方法論の可能性、有効性について知り、議論する機会を持ちたいと思います。

【講演概要】
・櫻井保志(熊本大学大学院自然科学研究科)
「時系列ビッグデータ解析とその応用」
近年のIoTデバイスの急速な普及に伴い、それらのデバイスから多様かつ大量のデータ が生成され続けている。また、FacebookやTwitterなどの巨大なソーシャルネットワーク上を大量の情報が高速に流通するようになっている。増え続ける大規模なデータ、すなわち時系列ビッグデータを高速に解析する時系列データマイニング技術は非常に重要になっている。本講演では、講演者が取り組んでいる時系列ビッグデータ解析技術、特に非線形テンソル解析に基づく予測技術の研究を紹介する。さらに時系列ビッグデータ解析の応用例として、具体的な事例をいくつか紹介する。

・安藤英由樹(大阪大学大学院情報科学研究科)
「意識下応答を活用した情報提示デバイスの研究」
現在のスマートフォンやPCなどはほとんど意識上で判断し注意を払わなければ,その利用は難しい。一方で,日常的な行動のなかにはほとんど無意識で行っているとも多い。本講演ではほとんど知覚されないが行動に強い影響を与える刺激手法や,無意識に行っていることをセンシングし,知覚されない刺激をフィードバックすることで情動を誘導する技術について紹介する。

・景山 望(海上自衛隊潜水医学実験隊)
「新たな認知機能検査ツールとしてのタブレットの有用性」
実際の労働現場などで認知機能を測定する際,使用機材や実施時間に制約が伴うことから,測定項目が限定されることがある。1台に複数のアプリが実装可能であり携帯性に優れたタブレット端末は,測定環境に左右されない認知機能検査ツールとなる可能性を秘めている。本講演では,タブレット端末を用いた心理学研究や労働現場で認知機能を測定した研究を紹介し,様々な測定環境においても認知機能検査を実施できるツールとしてのタブレット端末の有用性について議論する。

【講演会報告】
本講演会では,全体タイトルを「基礎心理学の新しい方法を拓く - ビッグデータ・生体センサー・タブレットの活用 -」と題し,3名の研究者による講演をもとに,新しいデータ解析あるいはデバイス利用に関する議論の場がもたれた。熱気に包まれた講演とその質疑は3時間を越え、充実した時間となった。講演内容の概略と注目を集めた点は以下の通りである。
 第一講演者であった櫻井保志氏には「時系列ビッグデータ解析とその応用」と題し,データサイエンスの最先端の知見とそれを用いた最新の技術と可能性についてお話をいただいた。特に生態学のアイデアを元にしたデータマイニングや,データが示唆するモデルをリアルタイムにモデルデータベースを登録しつつ,今後の変化についての予測を行う技術、それらを支えるMANT(multiple aspects nonlinear tensor)の考え方などに注目が集まった。
 第2講演者の安藤英由樹氏には「意識下応答を活用した情報提示デバイスの研究」と題して,意識下という心理学とも深く関連する領域に関連する,工学的な具体的デバイスの開発並びにそうした開発にまつわる今後の問題点についてのお話をいただいた。特にMMN脳波を利用したニューロフィードバックの技術などのあまり心理学では知られていない知見や,意識下に関わる様々な技術についての倫理的問題の発生の可能性は、興味深い話題であった。
 景山望氏による「新たな認知機能検査ツールとしてのタブレットの有用性」のお話では,海底での高圧下における現場作業での心理的検査の実施の困難さから始まり,これを克服するためのスマートフォンやタブレットの利用の可能性,そして世界的レベルで現在開発されているこうした新しいデバイスを利用した心理学実験の現状が紹介された。同氏のタブレットを用いた研究は今まさに進行中であるが、紹介されたこうした新しいデバイスでの研究可能性は、今後一層高まると考えられる。


他者の生(ライフ)を受け止める「聞きなぞり」の手法―高齢者のライフストーリーを演じ継ぐ/記憶を生き直す―

講師:石野由香里(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター助教)

日時:2015年2月9日(火) 14:30〜17:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 旧万来舎ノグチルーム

【講演会報告】
各方面から15名もの参加者を迎え、石野さんと学生演技者(早稲田大学4年生)により、同じテーマで三回ほどのパフォーマンスがなされ、その都度、参加者との意見交換が行われた。ある団地に居住する高齢者の語りを聞き、それを聞いた側が自分の身体を通じて、いかにこなし、いかに表現するのかが問われた。語りの内容とともに、それを語る高齢者の仕草や表情、語り口を端的になぞることで、逆に、他者へ接近するという試みだった。社会学では聞き取りやインタビューは基本作業のひとつだが、多くの場合は、文字に起こされる語りの内容だけが対象にされてしまう。語りという出来事をいかに全体として引き受けるのかについての実験的な試みで、参加者も非常に熱心に加わっていた。


マクダウェルのカント解釈のその後

講師:村井忠康

日時:2015年1月20日(水) 13:00〜14:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎473教室

共催:三田哲学会

【概要】
ジョン・マクダウェルの主著『心と世界』(神崎繁・河田健太郎・荒畑靖宏・村井忠康訳、勁草書房、2012年;原著:John McDowell, Mind and World, Harvard U. P., 1996)の共訳者の一人であり、現在マクダウェルとその周辺の哲学状況についてもっとも詳しい哲学者である村井忠康さんをお招きして、『心と世界』以降のマクダウェルのカント解釈の発展について講演していただきます。

【講師略歴】
村井忠康
ジョン・マクダウェルの主著『心と世界』(神崎繁・河田健太郎・荒畑靖宏・村井忠康訳、勁草書房、2012年;原著:John McDowell, Mind and World, Harvard U. P., 1996)の共訳者の一人であり、現在マクダウェルとその周辺の哲学状況についてもっとも詳しい哲学者である村井忠康さんをお招きして、『心と世界』以降のマクダウェルのカント解釈の発展について講演していただきます。


パフォーマンス・アートとは? 講演、実演、ワークショップ

講師:北山聖子(アーティスト)・濱田明李(アーティスト)

日時:2015年12月10日(木) 11:30〜14:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎457教室

共催:アート・ベース・リサーチ(ABR)研究会,三田哲学会

【概要】
パフォーマンス・アートとは何か、講演、実演、ワークショップ形式で参加者に体験してもらう。講師として、2人の女性アーテイストをお呼びする。
本講演の目的は、アートとしてのパフォーマンスをアートの中で知ることではなく、広く、社会科学一般への適用を想定している。広く、アートベースリサーチ(Arts-based Research ABR)と呼ばれるアプローチがポストモダニズム以降、反実証主義的な方法論として提唱され十数年以上になるが、日本での適用例や実践例は、芸術教育系の講義で僅かに見られるものの、社会科学としては皆無である。その理由は、アート表現によって科学的なアウトプットはできないという先入見であり、同時に、研究者が自分の作業にあるアート性を認識しないためである。申請者は、10年以上にわたりアートと社会学の接合を試みており、とりわけ、エスノグラフィーにおけるアートの利用は、演劇的な手法として一定の評価を受けてきた。パフォーマティブ・エスノグラフィ、さらには自己の体験を素材にして、なおかつ他者とともにエスノグラフィーを完成させる、パフォーマティブ・コラボレイティブ・オートエスノグラフィーとして根づきつつある。今回は、最終的なアウトプットの可能性として、演劇より現代アートに近い身体表現であるパフォーマンス・アートを取り上げ、実際に参加者がパフォーマンス・アートを経験する。

【講師略歴】
北山聖子
1982年、長野県生まれ。
東京造形大学絵画科を卒業した後、2009年よりパフォーマンスアートを始め国内外で活動。観客の1人をパフォーマンスに引き込むパフォーマンス、クロード・レヴィ=ストロースの「ブリコラージュ(器用仕事)」をパフォーマンスアートの根幹と考え、簡易なマテリアルと行為の間に意味を生成するパフォーマンスなどを展開する。2009年〜2012年NIPAF(Nippon International Performance Festival)参加。国内は、パン屋会(埼玉)長谷寺秋分祭(長野)おてらハプン!(滋賀)METACTION(東京)等に参加。国外は2011年NIPAFインド・バングラデシュ交流展参加、2013年台湾 Instant42ギャラリーにて個展とパフォーマンス、メキシコAcademia de San Carlosにてパフォーマンス、2014年Miami International Performance Art Festival 参加。
濱田明李
1992年高知県南国市生まれ。2015年武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業。
大学在学中にパフォーマンスをはじめ、2012年より日本国際パフォーマンスアートフェスティバル(NIPAF)による公演やアジアツアーに参加。またライブハウスの企画等に参加し、ライブパフォーマンスを行う。野生、霊性。相容れない事柄同士が交わる領域を行為によって探る。平成26年度武蔵野美術大学卒業制作展で発表したパフォーマンス&インスタレーション「灰の冷たさ、犬の隙間」が優秀作品賞を受賞。


From Cajun Crayfish to Spicy Little Lobster: A Tale of Local Culinary Politics in a Third-Tier City in China

講師:Sidney Cheung(香港中文大学人類学科教授)

日時:2015年12月09日(水) 18:30〜20:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎412教室

共催:三田哲学会・慶應義塾大学人類学研究会

【概要】
本講演では、中国江蘇省におけるザリガニ(crayfish、小龍蝦)を食べる文化の興隆について、特に、地域の祭祀、博物館、地域行事などに関連した調査を通して論じることが目的である。新たに作られたスパイシーなザリガニ料理がローカルな文脈の中で発展してきたことの重要性や、ここ20年ほどの間に中国の3級都市においてどのような変容を見せているかを分析したい。ザリガニは、日本から1930年代にもたらされたが、当初は、これが在地の魚などの資源に悪影響を及ばすために、あまり好まれたものではなかった。しかし、1990年代に「 十三香小龍蝦」という料理が出現したことで、人気が急上昇し、江蘇省のみならず、上海や北京などの大都市にまでこの料理が受け入れられるようになった。本講演では、個々人の味覚がいかに社会政治的な環境と関わっているのかを明らかにしたい。

【講師プロフィール】
Sidney C. H. CHEUNG is Professor of the Department of Anthropology, Associate Dean of the Faculty of Arts, and Associate Director of the Institute of Future Cities, The Chinese University of Hong Kong. His research interests include visual anthropology, anthropology of tourism, heritage studies, food and identity, fragrance and ethnicity; his co-edited and edited books include Tourism, Anthropology and China (White Lotus, 2001), The Globalization of Chinese Food (RoutledgeCurzon, 2002), Food and Foodways in Asia: Resource, Tradition and Cooking (Routledge, 2007) and Rethinking Asian Food Heritage (Foundation of Chinese Dietary Culture in Taipei, 2015). He also serves as a partner of the UNESCO Chair project of Tours University, France on “Safeguarding and promotion of Cultural Food Heritage”.


フォト・エスノグラフィーの可能性と課題 − 文化の「担い手になる/である」ことからの模索

講師:ケイン樹里安(大阪市立大学)

日時:2015年11月17日(火) 16:30〜18:30

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎475教室

共催:アート・ベース・リサーチ(ABR)研究会,三田哲学会

【概要】
本講義は、調査者がフィールドで自ら写真撮影を行い、写真の選択・配列を行うことで作品化していくフォト・エスノグラフィーという手法がもつ可能性について報告することが目的である。具体的には、まず、観光地化という視角からいくつかの事例を取りあげ、フォト・エスノグラフィーによる社会風景の描写可能性について検討する。次に、「よさこい踊り」という文化現象を題材に、調査者がある文化の「担い手になる/である」プロセスのさなかでフォト・エスノグラフィーを行うというアプローチについて検討する。特に、調査者がある文化の「担い手である」場合に実施されるフォト・エスノグラフィーは、調査者が身体化していた解釈の枠組みを引き剥がし、言語化されてこなかった実践のプロセスを具体性をもって描きうる点について詳細に検討したい。
また、「撮ろうとしたもの」と「撮られたもの」および調査者によって「語られたもの」との関連性を吟味すること、調査対象の独自性やフィールドとの関係性を視覚化すること、といったフォト・エスノグラフィーを実施する際の実践的なポイントを順次指摘する。ビジュアル・ターン以降の社会学の課題についての議論を喚起することも、本講義の目的の1つである。

【講師略歴】
関西大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院文学研究科前期課程を修了し、現在同大学院の後期博士課程に在籍。専門は文化社会学。


MIPS 2015 - 三田哲学会 哲学・倫理学部門例会

日時:2015年10月24日(土) 11:00〜18:00

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎5階522教

【プログラム】
研究報告
11:00 11:45 非字義的意味の論理形式 高谷遼平 君(文学研究科博士課程)
11:45 12:30 前期フィリッパ・フットの道徳哲学 五味竜彦 君(文学研究科博士課程)
13:30 14:15 絶対か相対か -同一性と種別概念の結び付きをめぐって- 横路佳幸 君(文学研究科博士課程)
14:15 15:00 『エミール』における自然的善性について 吉田修馬 君(文学部非常勤講師)
15:00 15:45 ドゥルーズ『差異と反復』における「個体化」理論にかんする一考察 秋保亘 君(文学部非常勤講師)

講演
16:00 17:00 微生物と進化的総合 田中泉吏 君(文学部助教)
司会 岡田光弘 君(文学部教授)
17:00 18:00 美と倫理学(仮題) 樋笠勝士 君(言語文化研究所所員)
司会 山内志朗 君(文学部教授)


三田哲学会共催 医療・文化・社会研究会シンポジウム『宗教・文化・精神療法』

日時:2015年10月5日(月) 18:00 20:30

場所:慶應大学三田キャンパス 南校舎5階452教室

【プログラム】
1) Chris Harding(エジンバラ大学) Religion’ and ‘Culture’ as Therapeutic Categories in the Work of Kosawa Heisaku
2) Clark Chilson (ピッツバーグ大学) Contemplative Crying: Transformative Insights and the Emotions in Naikan
3) コメント:鈴木晃仁(経済学部・医学史)
司会:北中淳子(文学部・医療人類学)

 英国エジンバラ大 学と 米国ピッツバーグ大学から歴史学者・宗教学者を迎え、宗教・文化・精神療法に関する最新の研究についてご発表いただき、国内の歴史学者、 人類学者等を交えた議論の場をもちま す。英国のクリス・ハーディング先生は、インドと日本の比較宗教学的研究で知られており、最近で は日 本の精神分析の創始者である古澤平作のアーカイブを使用する許可 を得た唯一の研究者として、本邦の精神療法の歴史の分析を進めています。 米国のチルソン先生は、仏教学、特に真宗秘密講等長い間民間で伝えられてきた仏教の教えについてのご著書もある宗教学者であり、今回 は仏教の影響を 受けて誕生した内観療法についてご講義くださいます。皆さまのご参加をお待ちしております。
(事前登録は不必要・転送自由です)

【講演会報告】

英国エジンバラ大学の歴史家クリス・ハーディング先生と 米国ピッツバーグ大学宗教学者クラーク・チルソン先生をお迎えした精神療法と文化、宗教に関する本シンポジウムでは、日本、アメリカ、インドネシア等から幅広い領域の研究者が集まり、活発な議論が行われました。
ハーディング先生は、日本の精神分析の創始者である古澤平作のアーカイブに基づいて、古澤の思想の根底にある宗教観について考察され、チルソン先生は、内観センターでのフィールドワークを基に、内観における感情を論じられました。鈴木晃仁先生のコメントを受け、精神療法を受ける人々の語りや体験の根底にある歴史観について等いくつか新たな論点が出され、今後の日本の精神療法研究の重要な方向性を示す討論となりました。


Kurt Stavenhagen’s Theory of Collective Intentionality

講師:アレッサンドロ・サリーチェ氏(コペンハーゲン大学主観性研究センター)

日時:2015年6月23日(火)16時〜18時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館4階G-SECセミナー室


【講演会報告】
コペンハーゲン大学主観性研究センターからアレッサンドロ・サリーチェ博士を迎えて開催された本研究会では、20世紀初頭にバルト海地域で活躍した哲学者クルト・スターヴェンハーゲンの共同体論と、それが現代の社会存在論にとって持つ意義が論じられた。
サリーチェ博士によれば、選好するものの共有によって(最小限の意味での)グループへの同一化が生じるというスターヴェンハーゲンの見解は、その後の社会心理学の成果を先取りするだけでなく、共同で何かを選好するとはどういうことかに関する哲学的洞察を含んでいる。サリーチェ氏の講演はこの点を明晰にしめすものであり、質疑応答の時間にも活発なディスカッションが行われた。


教育思想史学会

日時:2015年9月12日(土)・13日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎

共催:慶應義塾大学三田哲学会

学会ホームページ:http://www.hets.jp/


2015年度基礎心理学フォーラム

日時:2015年5月9日(土)14時〜17時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎455教室

共催:日本基礎心理学会・慶應義塾大学三田哲学会

【報告者と報告題目】
田谷修一郎(大正大学人間学部)「身体特徴の違いが生む空間知覚の個人差」
松吉大輔(早稲田大学理工学術院)「個人差―連続と異質が交錯するヒト認知の多様性」
内藤智之(大阪大学医学系研究科)「視覚芸術に対する感性の個人差を生み出す脳内ネットワーク」

本講演会は,心理学における個人差について,これまであまり研究対象とされてこなかった基礎心理学の分野での研究の現在について知ることを目的としたものです。日本基礎心理学会と三田哲学会の共催として,3名の講演者をお招きしてシンポジウム形式で講演会を行います。年齢や文化,性別,技術の熟達など,既に個人差研究が盛んな社会学や人間科学,教育学等を学ぶ方々においても,心理学の最先端で何が明らかにされてきているのかを知る良い機会になるかと思います。心理学以外の研究者や一般を含め,幅広い分野の方々にお話を聞いていただきたく企画したものです。
 詳細は以下のURLを参照ください。
 http://psychonomic.jp/forum/


【講演会報告】
本講演会では,心理学および神経科学を専門とする3名の研究者をご招待し,知覚や認知,脳機能測定の研究において扱いうる個人差研究の動向についてご講演頂きました。田谷先生には,右目と左目の間の離れ具合(両眼間距離)の違いが奥行き知覚などの空間認知に及ぼす影響について,松吉先生には物体認知や顔認知における個人差や自閉症スペクトラム研究における個人差の問題について,さらに内藤先生には絵画印象の脳内基盤と印象の度合いの個人差について具体的な研究例をご紹介頂きました。
本講演会では80名程度が参加し,遠方からの参加者も多く見うけられました。個人差をできるだけ排除するのではなく,個人差やデータのばらつきにも重要な情報が埋もれており,それをどのように活用すれば良いのかや,その生態学的妥当性に関する問題などについて有意義な議論が交わされました。
また懇親会では講演者や司会者らを交え,20名程が参加し,講演会に引き続き活発な議論と交流が有意義になされました(懇親会の費用は実費負担で行いました)。


フッサール研究会 シンポジウムと研究発表

日時:2015年3月14日(土) 12時-19時
       3月15日(日) 9時-16時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 第1校舎102番教室[地図]

共催:フッサール研究会

参加費: 1000円(資料代およびお茶代)
なお、三田哲学会会員は、その旨受付で申告していただきますと、参加費が無料となります。

 

【プログラム】
【一日目(3/14)】 12:00-13:00 受付
13:00-14:20 Nicola Liberati (名古屋大学) "The Borg-eye and the We-I. The production of a collective Leib through wearable computers and its knock-on effects."
14:20-14:30 休憩
14:30-17:00 シンポジウム「情動の哲学と現象学的感情論」
 企画:八重樫徹(東京大学)
 司会;榊原哲也(東京大学)
 提題:服部裕幸(南山大学)(南山大学)、陶久明日香(学習院大学)、八重樫徹
17:00-17:10 休憩
17:10-18:30 特別講演 Nicolas de Warren (KU Leuven) “Trust in the World: Original Doxa and Neutralization in Husserl's Phenomenology”
19:00- 懇親会
 会場: 82 Ale House三田店
 会費: 一人あたり4000円程度(参加人数によって若干の変動の可能性あり)
*参加予定の方は、3/7までに植村玄輝(uemura.genki[at]gmail.com (http://gmail.com))におしらせください。

【二日目(3/15)】
10:00-11:20 高山佳子(大阪大学)「フッサールの倫理思想とケアの倫理-生活世界に位置づくケアの倫理の原理的探求に向けて」
11:20-11:30 休憩
11:30-12:20 ミーティング
12:20-13:20 昼食
13:20-14:40 石井雅巳(慶應義塾大学)「『全体性と無限』における享受論の実在論的読解ーレヴィナスはいかなる意味で現象学的か」
14:40-14:50 休憩
14:50-16:10 加藤康郎(慶應義塾大学)「現象学的美学の可能性について」
※研究発表要旨とシンポジウム開催趣旨文はこちらで見られます。

【研究会報告】
フッサール研究会との共催で行われた本研究会では、服部裕幸氏(南山大学)をゲストとして迎えたシンポジウム「情動の哲学と現象学的感情論」およびNicholas de Warren氏(KU Leuven)による特別講演”Trust in the World: Original Doxa and Neutralization in Husserl's Phenomenology”をはじめとした、フッサールおよび現象学に関する研究発表が行われた。二日間に渡る長時間の研究会であるにも関わらず、両日とも参加者による活発な議論が行われ、盛況のうちに閉会した。
参加人数(発表者、講演者、研究会幹事は除く):32名(塾内7名・塾外25名)


計量テキスト分析についての研究会

講義内容:計量テキスト分析への招待

講師:樋口耕一(立命館大学産業社会学部准教授)

日時:2015年3月17日(火) 13時30分〜17時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス北館大会議室(北館3階)

司会:平沢和司(北海道大学文学部)

共催:慶應義塾大学三田哲学会

参加費:社会調査協会会員、三田哲学会会員、慶応義塾大学関係者は無料。それ以外の方は資料代として500円をいただきます。

【講師紹介】
略歴:2000年大阪大学人間科学部卒業、2005年大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。日本学術振会特別研究員、大阪大学大学院人間科学研究科助教を経て2008年より現職。
専門:社会学、とくに情報行動についての調査研究および内容分析(content analysis)の方法論。
著書・論文:『社会調査のための計量テキスト分析−内容分析の継承と発展を目指して−』ナカニシヤ出版、2014年。「情報化イノベーションの採用と富の有無−ウェブの普及過程における規定構造の変化から−」『ソシオロジ』57(3):39-55. ほか多数。

備考:
1 当日はソフトウェアを用いた実習形式での講義も行われます。参加者の方は、ノートパソコン(Windows)を持参されることをお勧めします。
2 準備の都合上、出席ご希望の方は3月10日までに下記まで連絡をお願いします。当日参加も可能ですが、原則として申し込みをお願いします。慶應義塾大学・三田哲学会関係者の方は、以下までお願いします。
 稲葉昭英(文学部人間科学専攻): ainaba@flet.keio.ac.jp

【研究会報告】 本講演会は社会調査協会の研究会として行われたものであり、三田哲学会には共催していただいた。樋口氏は計量テキスト分析を行うソフトウェアK-H Coder(川畑−樋口コーダー)の開発者であり、参加者はK-H Coderを用いたデータ分析を実習形式で学ぶことができた。K-H Coderは、マスコミ研究などで用いられる内容分析を計量的に分析しうる簡便なソフトであり、語の出現頻度や共起語の集計およびその関連をネットワーク・グラフ表現などによって視覚的に把握すること可能にする。また、質問紙調査などの自由回答をキーワードによって取り出し、比較するなど、これまであまり活用されてこなかったデータを活用しうる可能性を大きなものとした。講演はよく準備され、また内容も明快で、参加者にとってはきわめて満足の高いものとなったように思う。
 また、使用させていただいた大会議室はマイク・システムやパソコン用の電源が豊富にあるなど、非常にすばらしい環境で、この点でもよい研究会を行うことができた。  参加者数 一般参加者67名、担当委員4名、合計71名


「無形文化遺産からみる〈世界〉と〈地元〉の関係」

講師:俵木 悟(成城大学文芸学部准教授)

日時:2015年2月4日(金) 18時15分〜20時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎312教室

 現在、遺産に関しての研究が高まりを見せている。特に無形文化遺産はユネスコの関与が強まって以来、多くの議論がなされてきた。日本は無形文化の保護を世界に先駆けて法制化した国であり、ユネスコの無形文化遺産条約の制定にも主導的に関わってきた。国内においても、無形文化遺産の保護とは、日本の文化財保護法に規定される無形の文化財の保護の取り組みが、国際的な規模で行われているものという理解が一般的であろう。
 しかし実際の運用過程では、むしろ両者のズレが表面化し、問題化している。さらに「和食」のような国内の文化財保護とは無縁の無形文化遺産が登場したことで、そのズレを文化資源化の回路として利用する道も開かれてきた。こうした国内の無形文化遺産をめぐる状況について、とくに文化財/文化遺産の主体という問題と、遺産の代表性という概念に焦点を当てて考察することで、無形文化遺産という国際的な制度とローカルな文化の伝承の相互作用がもたらすものについて論じたい。
【講師略歴】
1999年千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了。2002年1月から2011年3月まで独立行政法人国立文化財機構東京文化財無形文化遺産部に研究員として勤務。2011年4月より成城大学文芸学部准教授。専門は民俗学、民俗芸能研究。

【講演会報告】
日本は無形文化の保護を世界に先駆けて法制化した国であり、ユネスコの無形文化遺産条約の制定にも主導的に関わってきた。国内においても、無形文化遺産の保護とは、日本の文化財保護法に規定される無形の文化財の保護の取り組みが、国際的な規模で行われているものという理解が一般的であろう。しかし実際の運用過程では、むしろ両者のズレが表面化し、問題化している。さらに「和食」のような国内の文化財保護とは無縁の無形文化遺産が登場したことで、そのズレを文化資源化の回路として利用する道も開かれてきた。本報告では、国内の無形文化遺産をめぐる状況について、とくに文化財/文化遺産の主体という問題と、遺産の代表性という概念に焦点を当てて考察し、無形文化遺産という国際的な制度とローカルな文化の伝承の相互作用がもたらす対立・葛藤・創造について広く論じられた。我々は遺産という概念が存在することが当然とされる現代にあって、どのように遺産と対峙すべきかが改めて問われた。


〈過去〉にアイデンティティを見いだす―マレー半島華人社会の珈琲カルチャーとレトロブームの展開

講師:櫻田涼子(育英短期大学准教授)

日時:2014年12月26日(金) 18時15分〜20時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎356教室

マレーシアの華人社会の最近の状況を、特に喫茶文化を中心として考察する。以下は要旨である。
ノスタルジックな花柄模様のカップアンドソーサーにたっぷりと注がれた深煎り豆のアロマと練乳の濃厚な甘さが特徴的なコーヒー。コーヒーをレンゲですくって少しずつ飲みながらおしゃべりに興じる南国の昼下がり。コーヒーのお供にはパンダンの葉で風味づけしたココナッツミルクと卵のジャムをたっぷり塗ったトーストを。
近年、マレー半島(マレーシア・シンガポール)を中心にアメリカ生まれのシアトル系コーヒーとは対極をいくコーヒーショップ、コピティアム(kopitiam)が人気を博している。本報告では、このコピティアムをめぐり顕現するノスタルジア、あるいは懐かしさといった華人の過去に対する認識と感情一般を考察対象とし、ある事柄に対し〈懐かしい〉という評価が下される時、そこでは一体どのような〈過去〉が想起されているのか、また、いかに過去と現在をつなぎ(あるいは断絶し)現在の我々を認識しているのかという問題を考察したい。
コピティアムとは、マレー語でコーヒーを意味するkopiと福建語で店を意味するtiamからなる語で、コーヒーや紅茶などの嗜好飲料と軽食を供する喫茶店のことを指す。19世紀後半以降、労働移民としてマレー半島に移り住んだ中国出身者のうち、海南出身者により営まれたコーヒーや軽食を提供する屋台や小さい飲食店がコピティアムの始まりともされる。早朝から深夜まで老若男女が飲食するコピティアムは、マレーシア華人社会における日常的場所であり、男性たちが政治談議に花を咲かせ交流する社交の場であるという意味において華人社会の重要な社会的空間として機能してきた。今日では、この伝統的コピティアムをモチーフとしてチェーン展開を図る近代的コピティアムが都市部を中心に急増している。シアトル系コーヒーチェーンが目新しさや先進性を売りにするところを、コピティアムは〈懐かしさ〉がキーコンセプトになっていることが多い。本報告では、マレー半島で興隆する〈過去〉を懐かしむレトロブームの諸相を、現地でコピティアムとよばれるコーヒーショップの展開を中心に考察する。
【講師略歴】
2010年筑波大学人文社会科学研究科博士後期課程歴史・人類学専攻修了。同年博士号(文学)取得。在学中はミッドランド・ルーサラン・カレッジ(米国)、マラヤ大学、マレーシア国民大学に留学。京都大学文学研究科GCOEプログラム研究員を経て、2013年から現職。専門は文化人類学、マレーシアの華人社会を主な研究対象とし、親族研究、住宅、食文化などについて研究調査を実施している。
主な業績:「家庭内祭祀から公共領域へ―マレーシア華人社会における『盂蘭勝会』の都市的構造」黄蘊(編)『往還する親密圏と公共圏』(京都大学学術出版会、2014年)。「从房屋到家―馬来西亜華人的廉价房屋居改造及日常実践」田中仁・江沛・許育銘(編)『現代中国変動與東亜新格局』(社会科学文献出版社、2012年)。「マレーシアの喫茶文化―国民的な飲食空間」河合利光(編)『世界の食に学ぶ―国際化の比較食文化論』(時潮社、2011年)。「新聞記事にみるマレーシア華人の社会関係の変容―『星洲日報』1929年から2012年の告知記事の分析を通じて」『白山人類学』第16号(東洋大学、2013年)。「『家』を生きる―マレーシア華人社会における関係の諸相」『華僑華人研究』5号(日本華僑華人学会、2008年)

【講演会報告】
 近年、マレー半島(マレーシア・シンガポール)を中心にアメリカ生まれのシアトル系コーヒーとは対極をいくコーヒーショップ、コピティアム(kopitiam)が人気を博している。本報告ではコピティアムをめぐり顕現するノスタルジア、あるいは懐かしさといった華人の過去に対する認識と感情一般を考察対象とし、ある事柄に対し〈懐かしい〉という評価が下される時、そこでは一体どのような〈過去〉が想起されているのか、また、いかに過去と現在を繋ぎ(あるいは断絶し)現在の我々を認識しているのかという問題を検討した。
 コピティアムとは、マレー語でコーヒーを意味するkopiと福建語で店を意味するtiamからなる語で、コーヒーや紅茶などの嗜好飲料と軽食を供する喫茶店のことを指す。19世紀後半以降、労働移民としてマレー半島に移り住んだ中国出身者のうち、海南出身者により営まれたコーヒーや軽食を提供する屋台や小さい飲食店がコピティアムの始まりともされる。早朝から深夜まで老若男女が飲食するコピティアムは、マレーシア華人社会における日常的場所であり、男性たちが政治談議に花を咲かせ交流する社交の場であるという意味において華人社会の重要な社会的空間として機能してきた。今日では、この伝統的コピティアムをモチーフとしてチェーン展開を図る近代的コピティアムが都市部を中心に急増している。シアトル系コーヒーチェーンが目新しさや先進性を売りにするところを、コピティアムは〈懐かしさ〉がキーコンセプトになっていることが多い。コピティアムの流行の陰には、マレーシアにおける華人の民系をめぐる葛藤もあり、今後はエスニック・アイデンテイテイを巡る諸問題へと発展していく可能性が示唆された。


アジア映画の中の日本兵―その表象の変遷と国による変化―

講師:夏目深雪(映画評論家、フリーランス)

日時:2014年12月2日(火) 18時15分〜20時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎413教室

中国の抗日映画はジャンルとして確立していて数も多く、『鬼が来た!』(02/姜文)など国際的に評価されたものから、『金陵十三釵』(11/張芸謀)のように中国では大ヒットしたが、日本では劇場公開できないような内容のものもある。他のアジア諸国でも、日本統治時代の台湾の原住民が日本警察に対して起こした暴動を描いた『セデック・バレ』(13/魏徳聖)は日本でも劇場公開されヒットしたし、タイで何度も映画化やドラマ化されている、日本兵と現地女性との恋愛話『メナムの残照』(13/キッティコーン・リアウシリクン)も今年の東京国際映画祭で上映され話題となった。反日と言われる中国と、親日と言われる台湾やタイの映画の日本兵の表象を比較してみたい。また戦後70年が経つのにまたアジア諸国との緊張が増している今、日本兵が映画に登場する意味を、日本兵の表象の変遷と国による変化を追いながら見ていきたい。
【講師略歴】
明治学院大学文学部フランス文学科卒。出版社勤務のあと、フランスに一年留学。以降、フリーランスで映画評や監督インタビューを寄稿。アジア映画本の編集や映画祭でのアジア映画の作品審査業務にも携わる。
主な業績:
共編著に『アジア映画の森−新世紀の映画地図−』(2012年、作品社刊)、『アジア映画で<世界>を見る−越境する映画、グローバルな文化』(2013年、作品社刊)。
主な論文に「混成アジア映画としての日本映画」『地域研究Vol.13 No.2(総特集 混成アジア映画の海 時代と世界を映す鏡)2013年、京都大学地域研究統合情報センター。


 

動物園に行こう:これからの動物園と野生動物の保全をめぐって

講師:黒鳥英俊(京都大学野生動物研究センター/NPOボルネオ保全トラストジャパン理事)

日時:2014年10月31日(金) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎475教室

【講演詳細】


黒人活動家たちにとってのメディア―20世紀前半のブラジルにおける黒人新聞

講師:矢澤達宏(上智大学外国語学部准教授)

コメンテイター:田中正隆(高千穂大学人間科学部准教授)

日時:2014年10月28日(火) 18時15分〜20時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎356教室

1920〜30年代を中心に、ブラジルの新興都市サンパウロ周辺では黒人に関する題材に特化した、いわゆる黒人新聞が複数発行された。
厳しい人種差別は存在しないという認識が内外ですでに定着しつつあったブラジルで、寄稿者たちは何を、どのようなかたちで発信しようとしたのであろうか。
本発表では、その認識や主張の多様性と揺れに焦点をあわせてみていきたい。
一方で、そうした多様で揺らぎも目につく黒人新聞の論調は、黒人運動に対しどのように反響したのであろうか。
当時、精力的に寄稿をおこなっていた数名の黒人活動家に着目し、その関係性の推移を追うことで、立場やスタンスの相違、さらには新聞というメディアがもった影響力についても考えてみたい。


スピノザ哲学の生成とその諸問題―実在・本質・原因性をめぐって―

講師:秋保 亘(慶應義塾大学文学部非常勤講師)・藤井千佳世(日本学術振興会特別研究員RPD・東京大学)・井上 一紀(日本学術振興会特別研究員DC・東京大学)

コメンテイター:鈴木泉(東京大学大学院人文科学研究科准教授)・山内志朗(慶應義塾大学文学部教授)・斎藤慶典(慶應義塾大学文学部教授)

日時:2014年10月18日(土) 14時30分〜17時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎465教室

17世紀オランダの哲学者スピノザは、個別的なものである人間の実在、本質、そして生についての思索を展開しました。しかし彼の哲学の解釈にかんして、現在でもなお多くの争点が残されています。
そこでこのたび、こうした争点のなかで、初期著作である『知性改善論』がスピノザ哲学においていかなる位置づけを有しているのか、また彼の主著『エチカ』における存在論の核をなす原因性の内実、そしてこの原因性によって産出される個別的なものの実在と本質の理解に焦点を当て、スピノザ哲学を生成史的研究の観点から再考するシンポジウムを企画しました。


教育思想史学会 第24回大会

日時:2014年10月11日(土)・12日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス

今大会は、三田哲学会との共催となります。三田哲学会会員(学部学生・大学院生・教員)は、大会参加費を無料とします。当日受付にて、学生証等身分を証明できるものをご持参の上、大会参加の手続きをおとりください。
学会ホームページ:http://www.hets.jp/
大会案内:http://www.hets.jp/_taikai.html


<複製>から<分裂>へ―中国福建省・客家土楼からみる宗族の形成過程

講師:小林宏至(日本学術振興会特別研究員・東京学芸大学非常勤講師)

日時:2014年7月15日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室

共催:慶應義塾大学人類学会

【講演会報告】
本発表は福建省永定県客家社会における円形の集合住宅、客家土楼を調査対象とし、居住者による各部屋の所有形態を整理・分析して、これまで宗族研究で一般的とされてきた「不均衡に発展した宗族の一分節が独立して新たな宗族を形成していく」という見解を再考した。従来の社会人類学による親族研究においては、宗族は<分裂>という過程を経て発展的に分節を形成するものと考えられてきた。しかし、発表者はその視座を短期的なスパンに置けば<複製>といった状況を見せ、長期的なスパンにおいてはじめて<分裂>という状況をみせると考える。本発表では客家土楼の事例から、宗族が<複製>から<分裂>へ向かう事例を示し、漢族社会における宗族の発展過程を再考し、併せて世界遺産に登録され観光化に巻き込まれ急速に変貌する客家社会の今後の行方を展望した。
社会人類学の古典的テーマであった親族研究に新たな可能性を見出そうとする意欲的な内容であった。


医療・科学・テクノロジー:人類学と人間科学複合領域の対話

日時:2014年7月12日(土) 10時〜18時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階GSEC LAB

参加費:無料

慶應義塾大学 論理と感性のグローバル研究センター/三田哲学会 共催

[詳細]


【概要】
「機械の人類学」で知られるシカゴ大学のマイケル・フィッシュ先生と、医療の比較文化研究を進めてこられたプリンストン大学のエイミー・ボロボ イ先生をお迎えして、国際シンポジウムを開催します。この領域における日本での理論的発展について、宮坂先生をはじめとした論者にご報告いただき、発達障害の流行、薬の治験等グローバルに展開する医療とテクノロジーをめぐる問題について、学際的な視点から討論を行います。皆さまのご参加をお待ち申し上げております。

【講演会報告】
本シンポジウムでは、医療と科学をめぐる最近の人類学の理論的発展について、複合領域との対話を通じての議論が行われた。
第一部では、発達障害、治験、ヘルス・プロモーションをめぐるテクノロジーについて論じられ、監視や管理と、自己への配慮の中間地点からうまれる臨床の形や、グローバルに連携しつつも地域的差異が顕著になりつつある、異なるケアの可能性が模索された。第二部では、人々の移動手段やソーシャルネットワークを通じたコミュニケーション技術の発展により、共同体の関係性がどのように変化しつつあるのか、また技術と人びとの関係性をめぐって、従来の疎外論がどう乗り越えられるのかが議論された。第三部ではディストピアと人間の本性についてより広いディスカッションが行われ、全体を通し人類学的探求が今後とるべき方向性について、活発な議論が行われた。
学内外から広く集まった医療・テクノロジーの社会科学の専門家のみならず、参加した学生会員達にとっても、国際的、先端的研究に触れるきわめて貴重な機会となった。


What is the Place of Behavior Analysis with Neuroscience in Ascendency?

講師:Jonathan L. Katz博士(Drexel大学・アメリカ国立薬物乱用研究所)

日時:2014年7月7日(月) 17時30分〜19時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館G-SEC 4階セミナールーム

【講演会報告】
本講演では、行動分析的な視点の重要性について関連する応用諸分野での事例を交えて話題提供された。行動薬理学分野における例として、薬理濃度に対する行動反応曲線を吟味する上で行動分析学が蓄積してきた関数記述の有効性について議論された。さらに、神経科学的な現象をメタ的な言語で解釈するのではなく、行動関数として記述することの重要性について強調された。討論も活発に行われ、個々のデータに対する議論から、神経科学における操作・記録技術の進歩に比して行動記述は今後どうあるべきかという広い話題にまで及んだ。
講演後は同セミナー室にて立食形式の懇親会を設けた。来聴者の多くは学生会員であり、第一線の研究の話題に触れ、直接話をする機会として有意義な会であった。


Cicero as Translator and Cicero in Translation

講師:John Glucker教授(イスラエルTel Aviv大学)

日時:2014年6月20日(金) 16時40分〜18時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館セミナー室

【講演会報告】
中期プラトン主義を中心に、ヘレニズム・ローマ哲学の研究で世界的に著名なグルッカー教授が来日された機会に(北海道大学が招聘)、ご専門のキケロについてご講演いただきました。
古代世界において専らギリシア語で従事されていた哲学を、ラテン語に翻訳することで積極的に紹介したキケロの意図や手法を、具体的な例に則して検討し、今日までの文化史的意義を再検討する重要なご講演でした。会場からも、当時のギリシアとローマの関係はどうだったのか、等の質問が多く出て、明治期に西洋語から翻訳を進めた日本との比較も議論されました。
懇親会は、セレスティン・ホテル1階の「葱や平吉」で開催しました。グルッカー教授を囲んで、学生や他大学の先生方ら8名で、教授のこれまでのご研究や経験など、ゆっくりお話を伺うことができました。


『働くこと』の意味ーある起業家のライフストーリーから

講師:青柳健一(株式会社LOUPE)

日時:2014年5月22日(木) 18時15分〜20時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎475番教室


【概要】
社会人類学では近年、教育のエスノグラフィーへの注目が高まっている。今回の講演会ではその事例研究として、教師が授業内容やノウハウを共有するためのソーシャルメディアサービスSENSEINOTEを運営する株式会社LOUPEの設立者、青柳健一氏を迎え、SENSEINOTEが目指す教育問題の解決への新たなアプローチについてお話しいただく。企業が社会的な課題である教育問題に取り組む事例は近年増えているが、SENSEINOTEは教員の支援活動にとどまらず、小中学校の教員が抱える構造的な課題の解決を目標として掲げている。従来の組織(国・自治体・教育企業)とは異なる「現場」と「当事者」の連携を核としたアプローチについて、具体的にお話しいただく。
さらに、青柳氏本人をはじめとする若手起業家のライフストーリーをもとに、「働くこと」の意味について議論する。彼らを取り巻く生活実態や日本社会における「スタートアップ」の広がりについて理解を深めることで、起業家と社会の関係とその相互の変容について考察を行う。


How Testimony Can Be the Source of Knowledge

講師:Nick D. Smith(米国Lewis & Clark College教授)

日時:2014年4月28日(月) 16時30分〜18時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館 G-Sec Lab


【講演会報告】
国際学会(日吉キャンパス)に参加するため来日されたスミス教授に、現代認識論の最新研究を発表していただき、慶應内外からの参加者と活発な議論を交わしました。連休の合間という時期だったため、やや参加者が少なかったのが残念ですが、非常に内容の濃いセッションで、学部生数名にもよい経験となったようです。 懇親会は開きませんでした。


国際学会「プラトンとレトリック」

日時:2014年4月25日(金) 16時〜18時30分
        4月26日(土) 9時〜18時
        4月27日(日) 9時〜18時

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎 シンポジウムスペース/大会議室

主催:科研費補助金基盤研究(B) 代表:納富信留

共催:国際プラトン学会(International Plato Society)


シンポジウム「質問紙の科学:その可能性と展望」

日時:2014年1月11日(土) 12時30分〜18時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館G-SEC Lab


【概要】
本シンポジウムでは、社会科学の基本的な方法である質問紙(アンケート)を用いた調査について考える。質問紙は、人々の普段の生活や行動の内容を問うだけでなく、態度、価値観、臨床的特性、パーソナリティなど多様な対象についての調査や測定の重要な道具として利用されてきた。そしてある場合には、その結果が政策や意思決定に利用されたり、回答者の心理的特性を表すものとみなされたりしてきた。しかし、古くから知られているように、設問の構造や特徴によって回答結果には系統的な誤差が含まれ、質問紙調査の測定結果の信頼性や妥当性は必ずしも高くない。それにもかかわらず、こうした設問の選択肢に対する選択行動に関する研究は、特に欧米の研究者によって20世紀後半から細々となされてきただけであるし、そこで得られた知見も活かされているとはいえない。本シンポジウムでは、こうした問題意識に関心のある研究者に集まっていただき、質問紙をめぐる様々な問題点を掘り起こしてみたいと考える。

【講演】
木村邦博(東北大学大学院文学研究科)  「ワーディングの問題に関する実験的調査−認知的アプローチからの説明の可能性−」
吉村治正(奈良大学社会学部)  「調査票はコンテクストを持たない・・・のか?」
山田一成(東洋大学社会学部)  「Web調査における最小限化回答」
増田真也(慶應義塾大学看護医療学部)  「調査の回答における中間選択」
広田すみれ(東京都市大学環境情報学部)  「二ューメラシー、個人属性と回答傾向の関係」
竹村和久(早稲田大学文学学術院)  「公理的測定論と行動意思決定論からみた質問紙調査法」

主催:慶應義塾大学 「思考と行動判断」研究拠点

共催:三田哲学会


レプリカの仮面の社会生活−バリ島天女の舞(topeng legong)の事例から

講師:吉田ゆか子(国立民族学博物館 機関研究員)

日時:2014年1月7日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525-B教室


【講演会報告】
バリ島南部のパヨガン・アグン寺院に伝わる天女の舞は、ご神体の仮面(Ratu Bidadari)を被って少女が舞うもので、その歴史や神聖性のために特別な価値を置かれてきた。 この演目が80年代に芸術祭に招待された際、寺院側は高度に神聖な仮面が「汚染」される事を恐れ、レプリカを作成し、こちらで代用した。
本発表で注目したのは、レプリカのその後である。レプリカや模造品も、生み出されたあと、人々との関係の中に入ってゆく。現在このレプリカは、特定の寺院祭儀礼でも用いられる。しかし、この仮面を、「代用品の仮面」と考える者も、オリジナルの「子供」と位置づける者も、オリジナルと混同する者もいる。
本発表は、曖昧かつ両義的に意味づけられるこのレプリカの仮面が、天女の舞やオリジナルの仮面、そして仮面と人々の関係にいかなる影響を与えているのかについて考察した。文化財保護や美術品展示において模造品やレプリカがもたらす独特なる効果について考える機会となった。


癩はどのように表象されたか―映画<小島の春>(1940)への医療人類学的アプローチ

講師:松岡秀明(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター招聘教授)

日時:2013年12月17日(火) 18時15分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎473番教室


【講演会報告】
1931年 (昭和6)年に開園し、癩病患者を受け入れた国立療養所長島愛生園(岡山県)は、本発表で論じる映画<小島の春>の原作者小川正子(1902-1943)や、神谷美恵子(1914-1979)が医師として勤務していたことで知られる。一方、そこに入園していたひとりの男性患者が明石海人(1901-1939)というペンネームで、自らの病いについての短歌を発表していたことでも、この施設は知られている。結核のため、1938年に郷里に戻り療養生活をしていた小川正子は、愛生園の同僚の強い勧めで、愛生園在職中の1934年から36年まで認めていた巡回検診記録を1938年に出版した。『小島の春』がそれである。小川の予想に反して同書は30万部のベストセラーとなり、その結果映画<小島の春>が制作された。
1940年に公開された映画は、同年のキネマ旬報のベストテンの第1位に選ばれた。今回の発表では、明石海人や小川正子の短歌が効果的に用いられている映画のなかで、癩がどのように表象されているかを検討した。


石食い女―ある女性のライフストーリー

講師:小泉八重子(作家)

日時:2013年11月15日(金) 13時30分〜15時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎457番教室


【講演会報告】
小泉さんは多数の学生を前に、実物(漆喰、石など)も使って、自らの体験をわかりやすく実地にお話しいただいた。学生数名が、家族の「異常行動」を前にして、どのような反応をするのかについて、ワークショップとしての演技に挑戦するなど、非常に興味深い講演会になりました。


修験道の現代-大峯奥駈修行を事例として-

講師:天田顕徳(公益財団法人国際宗教研究所 宗教情報リサーチセンター研究所研究員)

日時:2013年11月12日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
「近代化が日本社会に大きな変化をもたらした」ことについては大方の了解が得られる。情報通信端末の爆発的な普及や交通網の発達は、いわゆるヒト・モノ・カネの流れを活性化し、現在、社会はますます流動性を増している。
本報告が注目したのは、現代社会に軸足を置きながらも、他方では「山」にも足を置く人々、すなわち現在の修験者の姿である。「情報化」、「登山ブーム/山ガールの登場」、「観光化」、「パワースポットブーム」などをキーワードとして、現在の山を取り巻く環境の変化について考察が加えられた。そして、これらの変化が現代の修験道/修験者達にどのような影響を与え、何を語らせているのかという点について、フィールドワークを通して得られた知見を基にして検討し、修験道を通して現代宗教の変化を研究する方向性を提示した。


アイドルビジネスの現在

講師:星野貴彦(編集者/プレジデント社)

日時:2013年10月13日(日) 13時〜15時

場所:三田の家(芝5-23-2 TEL:6809-2422)
[地図]


【講演会報告】
オルタナティブ社会学会のセッションとして行われた。
実際の構成は《君はあまちゃん? なんてったってアイドルって何?》というセッションで、塚田修一(東京都市大学)「女性アイドル“ファン”の歴史社会学」と斎藤誠子(慶應義塾大学大学院)「女性アイドルの女性ファン」の両報告とともに行われた。


クロストーク/アート・音楽とアクティヴィズム

講師:後藤吉彦(専修大学)・川邉雄(グラフィックデザイナー)

日時:2013年10月11日(金) 16時〜20時

場所:三田の家(芝5-23-2 TEL:6809-2422)
[地図]


【講演会報告】
オルタナティブ社会学という枠組みでのセッションでしたが、実際には、クロストーク《人が集うこと、インフォショップの可能性》というタイトルで、出演:成田圭祐(IRA)、山下陽光(途中でやめる)、上田憲太郎(気流舎)、はらだゆきこ(多摩住民)、原田淳子(路地と人)、CAFE★LAVANDERIA、模索舎、岡原正幸(三田の家)、MC:川邉雄(RLL)・後藤吉彦(専修大学)という構成で行われました。


Religion and Psychiatry in Japan and India: Medical, Social, and Intellectual Challenges

講師:Chris Harding(Edinburgh University/Keio University)

日時:2013年10月9日(水) 17時〜19時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎454教室


【講演会報告】
植民地時代から近代にいたるインド史、宗教・医療史の専門家として知られるハーディング教授は、現在慶應の訪問教授として、日本の近代初期における宗教と医学の研究を進めている。特に、今まで研究が進んでこなかった日本における精神分析の受容と、仏教との関係に着目し、稀少資料を用いたきわめて独創的かつ重要な分析を行っている。
今回は、その研究の成果の一部にも触れながら、現在欧米で議論されている精神医学と宗教、スピリチャリティの関係性について講演され、宗教、文化、医学の専門家を交えた、活発な議論が行われた。
その後の懇親会では場所を映して、講演に引き続き、宗教と医療についてのディスカッションが行われた。


ネパール北西部マナンの人々による『企業家』活動−交易からトゥーリズムへ−

講師:森本 泉(明治学院大学国際学部教授)

日時:2013年10月8日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
チベットと接するネパール北西部のマナンの人々は、土地生産性の低い地理的環境を背景に村外に生活手段を求めてきた。 村人にとって副業であった交易活動は、国内外の政治経済的変化を受けて主たる生活手段となり、アジア諸地域で活動を展開するようになった。 この交易活動に始まり、その他にも新たな経済機会をとらえ、マナンの人々はネパールにおいて「企業家」集団として知られるようになった。
本報告では、マナンの人々がいかに「企業家」活動を展開してきたのかを、その移動・移住過程に注目しながら検討した。 この作業は同時に、中心が周辺を包摂していくグローバル化ではない、ヒマラヤの村から展開するもう一つのグローバル化の考察にも展開することになった。


教育思想史学会 第23回大会

日時:2013年9月14日(土)・15日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス


今大会は、三田哲学会との共催となります。三田哲学会会員(学部学生・大学院生・教員)は、大会参加費を無料とします。受付にて、学生証等身分を証明できるものをご持参の上、大会参加の手続きをおとりください。

学会ホームページ:http://www.hets.jp/
大会案内:http://www.hets.jp/_taikai.html


障害をもって生きる

講師:森山 風歩(作家)

日時:2013年8月3日(土) 16時30分〜18時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 研究室棟第一会議室


【講演会報告】
主に学生からの質問に答える形で、風歩さんが、その人生、とくに障害をもちつつ、希望をもって生きることの喜びを語ってくれました。
会場には、他に、NPOノアールの熊篠慶彦さん、映画監督の佐々木誠さんなどもおり、講演は多方面に展開した。
終了後、さくら水産にて、8名ほどで懇親会を行った。


<アウシュヴィッツ>とともに暮らすということ―文化遺産と地元住民

講師:加藤 久子氏(國學院大學日本文化研究所PD研究員)

日時:2013年7月9日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
<アウシュヴィッツ>という語が表象するものについては、世界中で共有されている。しかし、アウシュヴィッツ強制収容所の跡地がポーランドに存在し、国家、政府、市民などによって、現在に至るまでどのように維持され、何が語られてきたかについては余り知られてはいない。
本報告では、ポーランドの国家・中央政府レベルでの動き(収容所跡地の博物館化、歴史認識、犠牲者の追悼儀礼)について説明した上で、収容所が建設されたポーランド南部の「オシフィエンチム郡」における地方レベルでの動きを検討した。具体例として、商業施設(シネコンプレックスやディスコ)の建設をめぐる対立、犠牲者追悼のために建てられた十字架が巻き起こした論争、新しく作られる「共生」の物語などが取り上げられて、ここ10〜20年来の動きに着目して、負の文化遺産とともに暮らすということについて考察が加えられた。


シンガポール陰暦七月の歌謡と芸能―歌台の変容と多様な展開

講師:伏木 香織氏(慶應義塾大学非常勤講師)

日時:2013年6月25日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
歌台は陰暦7月を中心として、シンガポール、マレーシアで行われる屋外歌謡ショーである。 中元節に伴う戯劇に変わるものとして陰暦7月の街に現れた歌台は、台湾などにおける陰暦7月のイメージとは異なって、華やかで賑やかなものである。 現在は、歌台をめぐるイメージの連鎖の中で、他の時期や、別の機会にも多く上演されるようになった。 さらにはシンガポール映画《歌えパパイヤ》や《12 Lotus》でもその舞台となるなど、シンガポールの芸能として重要な位置を占めるようになっている。
発表では、陰暦7月の鬼(孤魂)の信仰を基盤にしながらも、中元節に付随する戯劇やインナーシアターの娯楽としての歌台が、次第に現在の形へと変わってきた多様な展開過程が報告された。


日本文化人類学会 第47研究回大会

日時:2013年6月8日(土)・9日(日)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス


日本文化人類学会第47回研究大会が、2013年6月8日(土)・9日(日)の両日、慶應義塾大学三田キャンパスで開催されます。
三田哲学会から補助を頂いておりますので、三田哲学会の会員(学部生・院生・教員)の聴講を認めます。 ただし、名札がないと入れないので、事前登録制とし、以下のメールアドレスに、 タイトルを「日本文化人類学会聴講希望」として、名前・所属・学年・職名・連絡先を明記の上、 6月7日(金)午後3時までにメールをお送りください。当日は「総合受付」に申し出て頂くようお願い致します。

大会ウェブサイト:http://www.jasca.org/meeting/47th/index.html
Eメール: 47nbj[at]jasca.org
※[at]を@に変えて送信してください。

〒108-8345 東京都港区三田2-15-45
慶應義塾大学文学部 鈴木正崇研究室 日本文化人類学会第47回研究大会準備委員会事務局


スリランカの伝統医療に関する文化人類学的考察―診療の位置づけと医師‐患者の関係を中心に

講師:梅村 絢美氏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 ジュニア・フェロー)

日時:2013年6月11日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
スリランカの伝承医療では、医師は患者に診療費を請求することに積極的ではないという。これは、診療が積徳行為であると位置づけられ、診療が医師個人の能力だけでなく、星座の運行やその影響を受けて効力を発揮する薬草、そして超自然的存在などに由来するとされるためである。一方、患者たちは、様々の物品やサーヴィスを贈与のかたちで返礼している。
本発表では、医師による診療を無償の贈与と考え、患者による物品等のかたちでの返礼を別の範疇に属する贈与として考察した。
医師と患者の間で行われる贈与は決して清算されることがない。終わりのない贈与としての診療がもたらす医師と患者の関係について、マルセル・モースの贈与論を手がかりに考察がなされ、スリランカのシンハラ人社会での広義の医療行為についてより深い理解が得られた。


スピリチュアリティと心理療法―瞑想と療法のあいだ

講師:石川勇一氏(相模女子大学人間社会学部教授)

日時:2013年5月20日(月) 18時10分〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
石川先生のご講演は、心理療法としての修験道を中心的なテーマとしたものであった。
修験道の歴史と現状、および二人の修験者のライフヒストリーをもとに、修験道とは何かについて説明された後、 修験道における様々な身体実践―回峰、断食、滝行、捨身行、法螺など―が、 どのような心理療法的役割を果たしているのかについてお話いただいた。 修験道の諸行そのものが、身体と山との関係性の中で、ヴィパッサナー瞑想やイメージングの瞑想、 さらにはエネルギーの瞑想といった、心の寂静と昂進両面にわたる瞑想役割を複合的に果たしていることがよく理解された。
その後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田の大連で開催され、和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。


分散分析を基礎から見直す/モデル選択のための統計法

講師:南風原朝和氏(東京大学)/岡田謙介氏(専修大学)

日時:2013年5月18日(土) 14時〜16時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎445教室


【講演会報告】 本講演会では,2名の専門家に,心理学における統計利用についての専門的かつ実践的な話題を講演頂きました。 特に,これまでの心理学統計の使用方法について見直し,統計法の誤用や実験に特有な統計法,新しい統計法の動向などについて紹介して頂きました。 心理学の統計利用では,分散分析という統計手法が頻繁に用いられてきましたが,十分な数理的理解がないまま慣習的に使用している場合が多く,最新の知見や統計学の動向にあまり関心が向いてこなかったという実情があります。
本講演会では160名と予定を大幅に超える参加者に恵まれ,今後の心理学研究にどのように統計法を利用すれば良いのかについて有意義な議論が交わされました。
また懇親会では講演者や司会者を交え,20名程が参加し,講演会に引き続き活発な議論と交流が有意義になされました。


光に向かって―神道における祈りの実践について

講師:川村一代氏(若一王子宮権禰宜)

日時:2013年5月14日(火) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
川村先生のご講演は、神道の宗教的基礎、および祈りの実践の説明を通して、瞑想としての祈りの構造について、 地球交響曲第7番の神道的霊性の映像を交えながら行われた。 たいへんわかりやすい内容で、祈りとは何かについて大きな学びを得た。
講演終了後、春日神社での参拝をご指導していただき、具体的な祈りの実践を体験するワークショップ的要素もあり、 理解の助けとなった。その後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田の青空で開催され、和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。


ヴィパッサナー瞑想とは何か

講師:佐藤哲朗氏(日本テーラワーダ仏教協会事務局長)

日時:2013年5月7日(火) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
佐藤先生のご講演は、上座仏教の瞑想法であるヴィパッサナー瞑想の基礎をなす、 四無量心の瞑想(祈り)を中心としたものであった。慈悲喜捨という四つの側面をもつ、 この瞑想が、神への愛へと転移されたあいまいな愛の感情ではなく、 あらゆる他者の幸福を願う利他的な慈悲の心を涵養することの人類的な重要性を初期仏教の釈迦の教えをふまえながら説明された。
最後に、じっさいにこの瞑想のワークショップが行われ、言語を伴うサマタ瞑想の可能性について理解が促された。
その後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田のつるのやで開催され、和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。


暴力と歓待の人類学―アフリカ遊牧民の戦争と平和

講師:佐川徹氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科 助教)

日時:2013年5月1日(水) 14時〜15時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎474教室

[講演会の詳細]


【講演会報告】
戦争と平和はしばしば二項対立的な現象とみなされてきた― 「戦争学」と「平和学」といったような対照的に異なる別個の領域の研究対象とみなされ、 別々に取り扱われ、戦争と平和が実は連続した過程のなかのふたつの現象である、という立論は、 これまでの学説史・研究史上は、かならずしも展開されてはこなかった。 人文・社会科学に通底する、人間を本性的に暴力的とみなすホッブズ的人間観と平和的とみなす ルソー的人間観の対立があり、ふたつの見方が相交わる地点がみえてこなかったからである。
それに対して佐川徹講師(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助教)は、 集団間の武力紛争が頻発するアフリカ遊牧社会、とくに、エチオピア南部の牧畜民ダサネッチ の民族誌的事例調査にもとづく経験的データーを分析し、戦争と平和を一連の連続的な過程 として捉える研究枠組みを提出した―いかにその動態が生み出されているのかを各個人の 行為実践と社会関係に焦点を当てながら明らかにする立論をおこなった。 男性を戦争に向かわせる「男らしさ」イデオロギーの構築と相対化の過程、苦境に陥った「敵」 を歓待する倫理的実践の契機、ホッブズ的でもルソー的でもない遊牧民独自の人間観について、 新しい観点からの佐川講師の論点が提示され、質的調査や量データーを志向した質問紙調査から、 事例的事実への言及とその分析が示された。
聴衆は人間科学専攻関係者で少数であったが、質問が多発し、講演会としては実に活発な討論が 行われた。とくに人間は結局戦争をする本性をもつのかという質問は、今回のテーマの基本的 問いの一方の極にたつ見解にかかわっており、経験的データーからは確定的なことがいえない わけではあっても、いわゆる部族社会での戦争と近代国家同士の戦争との質的違い等の 一連の話題群につながっていく問いであることが了解された。(文責・宮坂)


道教瞑想と中国拳法―内丹法の諸相

講師:野村英登氏(二松学舎大学兼任講師)

日時:2013年4月30日(火) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
野村先生のご講演は、儒教、仏教、道教の三教の特徴を、それぞれ正坐・居敬、坐禅・止観、 内丹・存思という身体実践と、聖人、仏菩薩、神仙という目指す目標という観点から説明され、 それらが古代から現代にいたるまで―その形態は多様ではあるものの―、上虚下実という原則に貫かれている ことを説明されるとともに、ご専門とされている道教瞑想と中国拳法の実践に基づいて、 上虚下実の身体性について簡単なワークショップを指導していただくという内容で、 比較瞑想論的にたいへん興味深いものであった。
講演後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田の湯浅で開催され、和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。
以上より、本講演会の当初の目的は十全に達成されたものと考えられる。


現代タイにおける仏教運動―タンマガーイ式瞑想とタイ社会の変容

講師:矢野秀武氏(駒澤大学准教授)

日時:2013年4月23日(火) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
矢野先生のご講演は、タイの仏教系新宗教のタンマガーイにおける瞑想について、その歴史的背景、 その実際と社会性に関して、じっさいにタンマガーイ式瞑想のワークショップを通して展開された。 タンマガーイ式瞑想は、上座仏教に属するものでありながら、密教瞑想にきわめて類似しており、 比較瞑想論的にたいへん興味深いものであった。
講演後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田のつるの屋で開催され、和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。
以上より、本講演会の当初の目的は十全に達成されたものと考えられる。


瞑想の一般構造―比較瞑想論的視点から

講師:山本一博氏(玉光神社権宮司・新宗連理事)

日時:2013年4月16日(火) 18時〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎463教室


【講演会報告】
本山先生のお話は、複数瞑想体験とその分析に基づいた、瞑想の一般理論に関するものであった。 主体が客体としての心および身体を意識化することが瞑想の一般構造であることを示した上で、 止観を応用した身心全体を感じる瞑想、ヴィパッサナー瞑想を応用した身体に入った力を知覚し除く瞑想、 およびイメージング法を応用した過去の辛かった経験を受け止め和解する瞑想の三つの瞑想実践をじっさいに ワークショップ形式で行うことを通して、その詳細について論じられた。
講演後の質疑応答も活発で、そのひとつひとつに丁寧にお答えいただいた。
懇親会は、三田のつるの屋で開催され、そこにおいても本山先生の気さくなお人柄から、 和気あいあいとした活発な議論が継続して行われた。
以上より、本講演会の当初の目的は十全に達成されたものと考えられる。


組織の公正さが個人の態度や行動に与える影響:心理プロセスに注目して

講師:林洋一郎氏(法政大学キャリアデザイン学部准教授)

日時:2013年4月3日(水) 13時〜14時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎435教室


【講演会報告】
近年特に社会心理学や産業・組織心理学の分野で多くの研究が行われている組織における公正について講演された。 まず公正研究の主な理論を展望したうえで公正概念の多次元性や公正動機の問題を論じられた。
続いて個人心理を対象にした複数調査の成果として、公正さとストレス反応、 公正効果の日中比較などに関する統計的な分析結果が報告された。
働き方の多様化が進む現代日本社会の喫緊の課題である組織における公正性の問題について、 理論と実証の両面から具体的かつ総合的に考えるよい機会となり、活発な議論も含め、 参加者は有意義な時間をすごすことができた。


Social Dilemmas in Mobile Societies

講師:小林盾氏(成蹊大学文学部現代社会学科准教授)

日時:2013年4月2日(火) 14時〜15時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟346教室


【講演会報告】
小林盾氏は、社会的ジレンマ、社会階層の数理社会学的研究をテーマとされているが、 今回は、社会的ジレンマの実験的研究を御報告頂いた。 本報告では、グループ間移動をすることが一定のコストを支払えば可能な環境において、 繰り返し社会的ジレンマゲームを行ったとき、協力率・集団規模・集団間移動・移動コスト等の要因間にどのような関係があるかを数量的に検証した。 その結果、協力率が高いグループは、他のグループからの移動により規模が拡大し、 協力率は下がる、協力率が下がると退出者が出て、規模が縮小するという、サイクルが発生することが示された。 また退出コストが小さいほど、このサイクルの角速度は速まることも明らかになった。
質疑応答では、実験結果の現実社会における含意や最適な集団規模に関する議論等が活発に行われた。


レヴィ=ストロースの『遠いまなざし』について:関係論的アイデンティティ

講師:出口顯氏(島根大学法文学部教授)

日時:2013年3月5日(火) 13時15分〜15時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟356教室

[人間科学コロキアムのご案内]


【講演会報告】
生殖技術や国際養子縁組の発達により、現在人々の家族観やアイデンティティは急速に変容しつつある。 レヴィ=ストロースの思想研究の第一人者として知られる出口氏は、第一に、さまざまな民族・社会において、 同じ名前が近親者間で頻繁に用いられている現象を手掛かりに、近代的な自己同一性概念についての再検討を行い、 第二に、人工生殖や臓器移植といった先端科学技術が、人々のもつアイデンティティや、 「自然らしさ」の概念にもたらす揺らぎについて分析した。 特に、国際養子縁組が盛んに行われている北欧での民族誌的フィールドワークに基づき、 国境・文化を超えた親族構造の構築が、近代的ナショナリズムや民族論とも複雑に絡み合うことで、 現在どのような自己同一性を創出しつつあるのか、人類学的考察を行った。
第三に、従来の近代的アイデンティティ論を考え直す一つの方向性として、 レヴィ=ストロースの構造主義にすでにその萌芽がみられる「多自然主義」(ヴィヴェイロス=デ=カストロ)を紹介し、 「動物」対「人間」、「自然」対「文化」、「普遍性」対「多様性」等の近代的二項対立を乗り越える、 関係論的アイデンティティ構築の可能性について論じた。
出口氏の講演は、近代的人間観・自然観の相対化を試みる人類学的思想を理解する機会として、きわめて刺激的なものだった。
その後の懇親会では場所を映して、講演に引き続き、内容についてのディスカッションが行われた。


貧困・離婚と子ども

講師:稲葉昭英氏(首都大学東京 都市教養学部教授)

日時:2013年3月4日(月) 13時〜14時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟325B教室


【講演会報告】
親の離婚や定位家族の貧困が子どもにおよぼす影響について、社会階層と社会移動全国調査 (SSM調査)、内閣府「親と子の生活意識に関する調査」、東京都福祉保健局による調査の 各データをもちいた分析結果を報告された。
その結果、母子世帯ではひとり親世帯が貧困を招き、それが学習態度や進路選択に負の影響をしており、 剥奪仮説に適合していた。他方で父子世帯では子どもの放任が媒介して学習態度や進路選択に負の影響をしており、 社会化仮説に適合していた。また、離婚やひとり親はこどものメンタルヘルスや自尊心に負の効果をもち、 家族ストレス仮説にも適合的だった。
稲葉氏の報告は、離婚や貧困から子どもへの影響を媒介するプロセスを明らかにするもので、 きわめて興味深いものであった。


ワーク・ライフ・バランスはどのように問題なのか

講師:杉野勇氏(お茶の水女子大学 文教育学部准教授)

日時:2013年3月4日(月) 15時30分〜17時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟325B教室

[コロキアムのご案内]


【講演会報告】
ワークライフバランスにかかわる研究は、女性の就労支援や少子高齢化対策、 企業の雇用・人事、産業社会学・労働社会学とフェミニズムなどの各視点から展開されてきており、 その概念じたいが一枚岩ではない。
報告では、実証研究の成果もまじえながら諸研究を比較検討し、その問題点を指摘された。 その問題点とは第1に、家庭が仕事の阻害要因であること、あるいは仕事が家庭の阻害要因であることについて、 その原因帰属を当事者から直接に聞くことが適切かという問題である。 第2に、同様にワークライフバランスが実現しているかを聞くことが適切かという問題である。 第3に、政策的な推進(公的なクレイミング)が特定層の要望に応じることになっている可能性である。 第4に、そもそもワークライフバランスが実現しているという判断が、どのように形成されるかという問題である。
これらは、ワークライフバランス研究にたいする刺激的な指摘だった。


生物学の哲学の諸問題

講師:田中泉吏(慶應義塾大学非常勤講師),森元良太(慶應義塾大学非常勤講師)

日時:2013年2月4日(月) 13時30分〜19時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 研究室棟地下1階第1会議室(B126)


【講演会詳細】
近年の生物学の哲学で活発に議論されている問題について、博士論文が受理された田中泉吏君、 博士論文の提出を予定している森元良太君の2名から、それぞれ下記のようなタイトルで講演していただきます。
科学哲学に関心をもつ学生、院生諸君にはぜひ出席して、進化生物学を巡る最近の動向を知り、 議論に参加してほしいと思います。

田中泉吏「利他性の進化と選択のレベル」13時30分〜
森元良太「進化生物学における確率概念」16時30分〜


障害者とセックス〜ヨーロッパ視察報告

講師:熊篠 慶彦氏(NPOノアール理事長)

日時:2013年1月11日(金) 16時15分〜17時45分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎437番教室


【講演会報告】
熊篠氏の今までの活動来歴からはじまり、NPOの立ち上げ、その活動の紹介が行われ、 その上で、ヨーロッパの事情が話された。
参加者の積極的な質疑のなかで、従来、私たちが囚われがちな、障害者観、 ヨーロッパ事情などが問題化され、非常に有意義な講演会であった。


近現代ハワイ日系宗教の布教者における東アジア経験

講師:高橋 典史氏(東洋大学社会学部准教授)

日時:2012年12月18日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
ハワイでの日系宗教、特に天理教の発展史を主軸にすえて、近現 代におけるヒトと宗教の 移動のダイナミズムの一端が、同郷者ネットワークと東アジア体験の 観点から明らかにされた。 戦前の日系宗教の諸集団が着手していた朝鮮や満州などの東アジア における布教の体験が生かされて、 戦後には独自の発展をハワイで遂げた過程が考察された。
また、ハワイの日系新宗教教団における布教者の個人史の考察も取り込んでいて、 社会変化に 基づく人生の変転を巧みに描き出す試みが興味深かった。


「パフォーマンスアートの現代」ワークショップ

講師:霜田 誠二氏(アーティスト)

日時:2012年12月14日(金) 16時15分〜17時45分

場所:三田の家


【講演会報告】
多くの参加者が、パフォーマンスアートについて初心者であるにもかかわらず、 最後には夜の三田の街に出て、ひとりひとりがパーフォーマンスを行うという結果になった。
懇親会を途中に挟んで、ほぼ二部構成で行われたが、25名ほどは最後まで参加してくれた。


ライフストーリーの知と生の社会学

講師:小倉 康嗣氏(慶應義塾大学他 非常勤講師)

日時:2012年12月7日(金)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟324番教室


[講演者からのメッセージ]
2000年代以降、「ライフストーリー」という言葉は、方法論的には一定程度定着してきた感がある。 だが、それが結局、どんな知をもたらし、人間と社会にどんな働きかけをするのか、ということについては、 意外に明確な議論がなされていない。
本講演では、この問題を考えたいと思う。私自身は、この問題への応答は「生の社会学」に行き着くのではないかと考えており、 その人間的・社会的・学問的意味・意義について、議論できればと思う。
当日は、ライフストーリー・インタビューの実際上の問題などについても、 参加者のみなさまと対話しながら、上記問題について考えたいと思っています。

【講演会報告】
表題について、小倉氏の最近の諸論文が資料配布され、それらに触れながら、非常に刺激的な報告がなされた。
とくに、対話型報告とでもいうべき雰囲気を作り出して、参加の院生を議論に引き込んでゆく手腕は素晴らしく、 講演後の昼食懇親会には、学外を含め総勢13名が参加し、活発な質疑が続いた。


映画『隣る人』上映と講演会

講師:刀川 和也氏(監督)/菅原 哲男氏(児童養護施設理事長)

日時:2012年11月16日(金)

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎517番教室


【講演会報告】
「隣る人」上映後、引き続き、刀川氏と菅原氏の講演。そして質疑応答があった。 映画とともに、お二人の講演がたいへん衝撃的・感動的であった。活発な質問が学生/ 大学院生/卒業生/教員などからあり、それぞれに講演者から丁寧な応答がなされた。 質問をしたからこそ聞けた貴重なお話が多かった。
懇親会にも15名ほど参加し、より身近に情報交換/意見交換ができたことは、 よい機会だった。参加者からは、非常によかったという感想が多く寄せられている。
自己を問う・自己の研究を問う、という機会でもあった。


伝統的商慣行と『老舗』の近代―千葉県香取市佐原の商家を事例に―

講師:塚原 伸治氏氏(日本学術振興会特別研究員PD/東京大学東洋文化研究所)

日時:2012年11月13日(火) 18時15分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525番教室


【講演会報告】
千葉県佐原市で夏と秋の二回行われる都市祭礼の参与観察を通じて、人々のネットワークが どのように形成されるかを論じ、いわゆる「伝統」が如何にして維持・創造されるかを検討した。
特に、祭礼に関して寄付の金額を書いたビラを山車に掲げる慣行に注目して、祝祭的な場での 人間関係が社会・経済・文化を融合して行なわれる状況を考察した。
現在、鈴木正崇研究室が推進している成田山門前町の調査と比較することで、 双方の差異が明確になり、今後の研究への大きな刺激となった。


ゲーミングから見るリスク・コミュニケーション

講師:中村 美枝子氏(流通経済大学社会学部教授)

日時:2012年11月2日(金) 14時45分〜18時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎453番教室


【講演会報告】
講師・中村美枝子氏は、集団意思決定、合意形成、ゲーミング・シミュレーションなどを専門とされている。
本講演会では、ゲーミング(複数のプレーヤが知的ゲームを通じて相互に作用する場)を通して、 参加者にリスク・コミュニケーションについて考える機会を提供していただいた。 具体的には、参加者に3つのゲームに参加してもらい、その後、振り返り用紙に回答し、 討議するという形で進められた。ゲームは、8人グループで30分間にひらがなを一人1文字ずつ、 他メンバーとコミュニケーションを取らずに80文字の作文を書いていく「合同作文」、円陣を組み、 隣り合った二人を出発点にして逆方向に情報を流し、途中から情報が錯綜する「アオとアカ」、 異なる情報を与えられたメンバーが情報を取捨選択しながら問題点を明らかにし、 ある施設で生じた食中毒の原因食物を特定する「わいわいホーム食中毒事件」であった。
いずれのゲームにおいても参加者は楽しみながらも、コミュニケーションや問題解決に関連する種々の問題点 (人による言葉の解釈の違い、問題点の構造の把握、適材適所、ステレオタイプに囚われない柔軟な思考など) について考えさせられたようである。
続く懇親会においても活発な意見交換がなされ、有意義な時間をもつことができた。


リスクコミュニケーションにおける確率や共変性の伝達可能性

講師:広田 すみれ氏(東京都市大学環境情報学部教授)

日時:2012年10月27日(土) 15時〜16時30分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎461番教室


【講演会報告】
広田すみれ氏の講演は、リスクコミュニケーション研究のなかでも特に確率の問題を取り上げ、 不確実性伝達ツールとしての確率をいかにして適切に伝えるかという問題意識について豊富な例を交えつつ詳しく説明された。 さらに、確率における尺度の効果、確率解釈と確率認知、ニューメラシーについて、実証研究の結果を用いてまとめられた。
充実した内容のご講演を反映し、熱心な議論が行われた。


内モンゴルにおけるシャマニズムと民間医療

講師:サイジラホ氏(Saijirahu Buyancugla 日本学術振興会外国人特別研究員)

日時:2012年10月9日(水) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
サイジラホ氏は、医療人類学の観点からシャマニズムと民間医療の研究状況を概観し、 フルンボイルとオルチンの二つの地域でのフィールドワークに基づく考察を行った。
モンゴル医学に関しても造詣が深く、シャマニズムとの関連性について広い視野から討議がなされた。 社会主義の体制のもとで、今後シャマニズムや民間医療がどのように変化していくのかについて広い視野からの知見が得られた。
中国朝鮮族、インドネシア人、中国モンゴル族2人の外国人計4人の参加があり、国際的な学術交流の場となった。


講演:「身体表現ワークショップ〜Somatics & Laban」

講師:橋本 有子氏(ダンスムーブメントアーティスト)

日時:2012年8月9日(木) 11時〜16時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス(教室未定)


【講演会報告】
橋本有子さんによる簡単な説明の後、参加者がそれぞれ自分の体と向き合うことで ワークショップは進められた。ラバンの基本的な思想に基づいて、身体の六つのパタン、 それから効果として四つの要素、これらが身体実践によって分かりやすく説明されました。
それからチームになっての作品作りも楽しみました。
懇親会代わりの昼食をはさみ4時間は瞬く間にすぎました。


シンポジウム:「真理の形而上学―Truthmaker概念を中心として」

講師:小山 虎氏(大阪大学),飯田 隆氏(日本大学),加地 大介氏(埼玉大学)

日時:2012年7月28日(土) 10時〜13時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎452番教室


【講演会報告】
単に講師の間ばかりではなく、会場とも活発な議論が交わされた。
また、多くの方が懇親会にも参加され、引き続きあちこちで活発な意見交換がなされた。


シンポジウム:「ユダヤ・ディアスポラの継承と現象学の発展―フッサール、ハイデガー、レヴィナス、アーレント」

講師:池田 喬氏(明治大学),合田 正人氏(明治大学),田口 茂氏(北海道大学)

日時:2012年7月25日(水) 14時〜17時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎453番教室


【講演会報告】
他大学の研究者も多く来場され、活発な討議の場となった。
また、懇親会は、今回のシンポジウムで初めて顔を合わせた方々の間での貴重な意見交換の場ともなった。


講演:「沖縄の家族規範をめぐる「伝統の創造」の諸相と現代的変容の一側面」

講師:犬塚協太氏(静岡県立大学教授)

日時:2012年7月25日(水) 18時10分〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟342番教室


【講演会報告】
犬塚氏の講演は、沖縄の家族規範の多様性とその変容の錯綜について、 沖縄各地のフィールドワークに基づき、沖縄郷土史家を中心とする先行研究と付き合わせて、 展開された。
90分の講演が短く感じられるほどであり、熱心な議論が続いた。
懇親会では、院生の関心にも応えていただき、戸田貞三の知られざる資料への言及や再評価など、 おおいに座を魅了するものであった。


講演:「宗教ツーリズムの中の共同可能性―ヨーロッパのキリスト教巡礼の事例」

講師:岡本亮輔氏(慶應義塾大学文学部非常勤講師)

日時:2012年7月18日(水) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


講演:「デジタル時代における新聞報道のあり方」

講師:高橋美佐子氏(朝日新聞社)

日時:2012年7月10日(火) 16時15分〜17時45分

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎457番教室


【講演会報告】
講師の高橋美佐子さんは、約20年にわたる新聞記者の生活をベースに、自分の活動を振り返りつつ、 特に、家族のガン闘病を契機にした社会へのまなざしの変化についてお話いただきました。
学生からの質疑も活発で、とくに、高橋さんが今の学生たちのおかれた状況をふまえつつ、 話を進めたことが良かったようです。


講演「海を介した生活文化―三陸沿岸から見えた世界」

講師:川島 秀一氏(神奈川大学特任教授)

日時:2012年6月26日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎525B教室


【講演会報告】
講演は三陸沿岸の気仙沼に生まれ育った講師の体験をもとに、特的地域に止まらず、広く漁撈習俗を見ていくことが大事だという示唆に富む見解が示された。
具体的には、カツオ船に乗り組む漁師たちの船上での習俗や儀礼には、かつての北前船で行われていたものとの共通点を指摘し、 乗組員や「湊町」を介する生活文化の特色や文化伝播の様相を明らかにした。


講演 "Somaesthetics and Contemporary Art"

講師:Richard Shusterman(Florida Atlantic University)

日時:2012年6月21日(木) 16時30分〜18時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院棟313番教室


講演「身体の社会学/社会学の身体(2) パフォーマンスの身体」

講師:霜田 誠二氏(パフォーマンスアート)

日時:2012年5月22日(火) 14時〜16時

場所:三田の家(港区芝5-23-2)


【講演会報告】
まずは、週末のワークショップについて。18日はキャンパス中庭で、19日は三田の家で、 パフォーマンスアートに関する講義と実習が行われました。
18日は学部通学生が12名、19日は通信生が8名、および外部から10名ほどの参加者がありました。 パフォーマンスアートという表現の実習やビデオ鑑賞、そして自分の作品の発表会が行われ、 特に発表会には数人のパフォーマンスアーティストも加わり、かなり密度の濃い、一連の講演会になりました。


講演会

横井孝志(産業技術総合研究所)「人間工学分野における研究倫理指針」

松井孝雄(中部大学)「心理学学部教育へのコースクレジット制度の導入と評価」

奈良雅俊(慶應義塾大学)「研究倫理から見た実験心理学の展望」


日時:2012年5月19日(土)14時〜17時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎524教室


講演「身体の社会学/社会学の身体(1) 演技する身体」

講師:望月 六郎氏(劇団演出家)

日時:2012年5月15日(火) 14時〜16時

場所:三田の家(港区芝5-23-2)


【講演会報告】
三田の家に30人近くが集い、望月六郎さん、および彼の劇団の女優三名がゲスト講師として招かれました。
望月さんの新作 I am Hamの脚本を土台にした演技練習などが披露され、また映像作家として、 様々な社会的場面で取材活動を経験してきた彼の話は多くの学生にとって興味深く、熱心な質疑もなされた。
懇親会は三田の家で簡単に行われました。


講演「シャマンと守護霊と人々のコミュニケーション−内モンゴル・ホルチン地方の事例から−」

講師:サランゴワ(薩仁高娃)(慶應義塾大学準訪問研究員)

日時:2012年5月8日(火) 18時15分〜

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 西校舎523-B教室


【講演会報告】
シャーマニズム研究の課題を述べ、内モンゴルの概要を呈示した後に、ホルチン地方で増殖するシャーマンの実態状況を検討した。
シャーマニズムに関して社会・経済・政治・社会などとの緊密な関係性を明らかにした。


講演「擬制的親族関係と家族の多様性」

講師:森 謙二氏(茨城キリスト教大学教授)

日時:2012年5月2日(水) 18時10分〜20時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 南校舎141番教室


【講演会報告】
森謙二氏の豊富なフィールドワークの経験、および広範な先行研究の渉猟を踏まえた講演は、 参加者をおおいに魅了するものだった。参加した教員/大学院生全員が質問・コメントし、 活発な議論が展開された。
引き続く懇親会においては、フィールドワークの興味深いエピソードを挟みながら議論が弾んだ。
この機会が、大学院生たちと森先生との研究ネットワークの誕生となり得たことも大きな成果である。


講演 "Rationality and Moral Realism"

講師:Nick Zangwill教授(Durham大学)

日時:2012年4月25日(水) 17時15分〜19時

場所:慶應義塾大学三田キャンパス 東館4階セミナー室




















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